【第114話】
ベギラゴン
新手で現れたのは、緑色の軍隊ガニと
それを操っているフード男だった。
数は二十とさほど多くないが、堅い甲羅をなかなか傷つけることができない。
兵士達は街を守るために果敢に挑んだ。しかしまったく歯が立たない。最初に動揺をしたのが、仲間の盗賊達だった。
兵士より勇気がないのか、おじけつき、逃げ出した。そこを魔物が追い討ちをかけて、ハサミで捕まえ体を切断する。惨い殺され方だった。
盗賊の中間達が逃げ出すと、その動揺が兵士にも伝わり、逃げようとする兵士も出てくる。
”殺せ!殺せ!”
フード男が興奮したように魔物に命令を出す。
「敵を切り裂け、バギ!!!」
トールが魔法を唱えると、小さな竜巻があらわれ、魔物を切り刻んだ。しかし敵の命を奪うほどの威力はなく攻撃は緩められない。
引き続き、トールが魔法を詠唱する。
「ルカニ!!!」
バギの魔法で傷つけられた魔物が青白く光る。
「スクルトの効果を打ち消しました!」
俺とゼネテスはルカニの魔法で守備力が弱められた魔物に少しずつダメージを与え、ようやく一匹倒すことができた。しかし敵の数はほとんど減っていない。
「やべぇぞ、親方!」
俺は親方に怒鳴った。
「このままじゃ、全滅だ」
ゼネテスも一見冷静そうだが、自分の武器でも傷つけられず手がでないようだった。唯一、トールの攻撃の呪文と親方の雷神の剣だけは、魔法で強化された魔物の甲羅を傷つけることができた。二体ほど、親方がカニの魔物をしとめていた。
しかし、数が多い。親方とトールだけではとても倒せるはずもなかった。
撤退すれば、後ろから狙い討ちされる。
「ゼネテス、ルーニ、こっちにこい!
今から魔法を発動する。
それまでの時間を稼げ!」
親方が俺たちに怒鳴った。
親方が魔法が使えるのか?今まで使ったのを見たこともないし、そんな話は聞いたことない。
だが、迷っている時間はなかった。
俺たちは親方の回りに集まり、なんとか魔物を牽制する。こちらの攻撃はことごとくはじき返されるので親方に攻撃が向かないよう、引き寄せることしかできなかった。
「今からワシが魔法を使う!!!
兵士の皆のもの、一斉に撤退しろ!」
そうか、魔法を使ったら、兵士達も巻き沿いをくう。兵士達は親方の声に動揺したが、自分の武器が聞かない以上、選択の余地がなかった。
兵士達が撤退をはじめると、魔物が追い討ちをかけようとしたが、その瞬間、親方が雷神の剣を振りかざした。
「雷神の剣よ、目の前の魔物を滅せよ!」
雷神の剣から、巨大な稲光が出て魔物を次々と飲みこんだ。
”ベギラゴンだと!?”
フード男が今度は動揺する番だった。
親方の雷神の剣の光が収まったとき、魔物達は消し炭になっていた。
俺は驚きのあまり、声がでなかった。絶体絶命の状態で、このままでは全滅を待つしかなかったが二十近い魔物を瞬時に消し去ってしまった。
これが親方が今まで大事にしていた雷神の剣の真の力なのか。
第115話 エビルマージ
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