【第116話】
親方の戦略
地獄のハサミを引き連れていた、エビルマージ。
イシスを落とすために、奴がこの地に派遣されたのはほぼ間違いがないだろう。
エビルマージは、自分を倒したいのであればピラミッドに来い、と言っていた。
だが、敵がわざわざ場所を指名して言ったことから、罠や敵も数多く待ち伏せているだろう。
親方が口をひらいた。
「ピラミッドの罠、エビルマージの罠もあるが、
もう一つ、考えるのは、どれだけピラミッドに人を避けるか、
という問題がある。
あのエビルマージとやら、本人の強さもあるだろうが、
軍師としても優れているかもしれん。
ワシらをピラミッドにおびき寄せながら、同時にイシスに
先ほどの魔物で攻め込む、ということも考えられる」
「そうか・・・そうなると、イシスの街を守る手段がなくなるのか」
仲間がうなづく。
「ロマリアからの援軍に魔法使いも混じっておれば、防げるかもしれないが、
少なくとも今のイシスの状態では防ぐ手段がないってことだな」
ゼネテスも同意する。
「じゃぁ、ロマリアからの援軍を待ってから、ピラミッドに行く、
ということもアリだな」
俺が提案をした。
「しかし、その場合、敵にも時間を与えることになる。
魔物が増えつづけ、次回の戦いで防ぎきれるかもわからん」
親方が不安なことを言う。
「親方はどうしたらよいと思うんだ?」
俺は親方に意見を求めた。
「だから迷っているのじゃよ。
難しい問題だが・・・ロマリアからの援軍がどのくらい来るか、いつ来るかが予想できない以上、
やはり、こちらから討って出る必要があると考えておる。
できるだけイシスには兵を残し、
少数精鋭でピラミッドを攻略するしかないかの」
親方は苦渋の顔で答えた。
「イシスの方は、どうしますかい?」
ゼネテスが親方に聞く。
「魔導師の杖という、魔法を帯びている杖がある。
威力は弱いが魔法が使えない者でも、魔法を発動できる。
次回の戦いに間に合うかどうかはわからんが、
アッサラーム辺りなら、手に入るかもしれん。
金に糸目をつけず、できるだけ大量に仕入れ、
兵士達に持たせるがよかろう。
あの地獄のハサミに対抗できるかもしれん」
「なるほど・・・わかりました。
女王に事情を話し、さっそく手配をします」
マヨイが答える。
「必然的に兵士達にはイシスの街を護衛するということになるから
ワシらだけで、ピラミッドにいくしかなかろうな」
「つらそうな戦いになるな・・・」
仲間達も浮かない顔だ。既に五人近くの仲間を失っており、残り十五人程度しかいない。果たして、この人数でエビルマージと戦えるのだろうか。
第117話 罠の種類
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