【第120話】

最低限の探索


宝箱に大量の血痕がついていた。

血の量から、仲間が殺されたのはたしかだった。


俺達は宝箱を調べず、親方の方に戻って報告をした。




左には宝箱がある行き止まりの部屋だったので

左手の法則にそって今度は正面を探索することにした。

右の道は後回しだ。


仲間の二人が先ほどと同様調べに行き、しばらくして戻ってきた。


「この先も十字路がありましたぜ。落とし穴付きで」


「ご苦労」


親方がねぎらいの言葉をかけ、次の十字路に進む。


マッピングは常に待機体制をとっているトールがやってくれた。

過去に盗賊経験があるだけあって、

書かれた地図も見やすかった。


「では、また左を探索しよう」


別の仲間二人が左の部屋に行こうとする。


「変な宝箱があって近づくなよ」


ゼネテスが声をかける。


「わかってるよ」


仲間が答え、左の通路に消えた。


しばらくすると二人が戻ってきた。


「行き止まりの部屋で、宝箱が二個あった。

 宝は調べずに戻ってきた。

 先ほどの部屋と同じじゃねぇかな」


「わかった。では次は正面じゃ」


別の二人が探索をして戻ってきた。


「行き止まりでしたぜ。

 部屋はなかったですが、宝がありました。

 落とし穴付きで」


「ピラミッドを作った主かエビルマージはワシらを

 どうしても下の階層に落としたいらしいな」


親方が腕組みをしながら言う。


「では、右の道を調べるぞい」


そう言って、また別の二人が行く。


しばらくすると戻ってきた。


「上に行く階段がありました」


「そうか」


みんな、少しほっとしたようだ。

整理をすると入り口から最初の十字路を左に行くと宝箱の罠、右は未探索、

正面に進むとまた十字路で、左と正面は宝箱、右は階段というわけだ。


「このまま上にあがりますかい?

 それとももう一つ手前の十字路の右手も探索していきますかい?」


ゼネテスが親方に指示を仰ぐ。


「いや、このまま二階に上がろう。

 エビルマージがいるとしたら、普通一階にいるとは考えにくい。

 途中の罠にひっかかれば、戦力も減るわけだし

 なにより、奴は人が死ぬのを楽しんでいる。


 それに、手前の十字路を右にいき、階段があれば

 もし一番最初に右に進んでいれば他の罠はひっかからずにすむはずじゃ。

 隠し扉などあったり、先ほどの罠と思われる宝が

 別の道に通じている可能性もあるので断言はできないがの」


「なるほどな」


俺は親方の考察に納得した。


とにかくこのピラミッドは軽く人の命を奪う罠が多そうだ。

一歩足を踏み出すだけで精神を消耗するので

できるだけ探索は少なくしたい。


最低限の探索で正しい判断をするには、

親方のような考え方が必要だ。


俺達は二階にあがることにした。


第121話 笑い袋

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