【第26話】
鉄格子をはさんで
俺とリュックはどうにかこの牢獄から逃げようと思った。
しかし、盗みに入ったときとは段違いに警備が厳しいこと、盗賊の七つ道具を含めて武器防具もすべて没収され俺たちには何もできなかったこと、ただ、牢獄にいることしかできなかった。俺たち二人は裁きの日を待った。
ところが、裁きの日はなかなか来なかった。一日に三度の食事を与えられているから空腹で苦しむこともなかったし水も与えられていたので喉も潤せ、体を洗うこともできた。
俺とリュックは不思議に思いながらも、不自由することなく牢獄で過ごし、毎日牢獄で裁きの日を待った。
そして俺とリュックは、もうこの牢獄で二週間を過ごしたくらいだった。
「久しぶりじゃのぉ・・・」
牢獄の外から声がかけられた。
俺とリュックは牢獄の外を見ると、俺たちをカサーブ近くで捕らえた例の凄腕の老人がいた。老人は今日は剣を指しているわけでもなく、相変わらず、黒い繊維で編んだ服を着ていたが腰に短刀を下げているだけだ。
「あんたかい」
「少しは肝が冷えたか?」
「あぁ・・・確かに悪いことをしたってことは自覚してるよ。
やる前からそれは自覚していたけれどな」
俺は素直に答えた。
「何故盗んだ?」
じいさんがギロリとにらんだ。
「大金に目がくらんだからよ」
「お主は金のタメなら何でもするのか?」
「殺し以外はする。
俺たちは生まれたときからずっとそうやって過ごしてきた。
そうやらなきゃ、飯が食えなかったからな」
「両親はいないのか?」
「俺たちは両方とも孤児院出身だ。
親の顔はしらねぇ」
「年は?」
「15」
俺はぶっきらぼうに答えた。
「おぬしもか?」
今度はリュックに聞く。
「はい、ボクもそうです」
その言葉を老人は目を細めて俺の話を聞いていた。
「あんた、俺達をからかいにきたのか?」
「まさか、お主達と話したかったのじゃ」
「こっちには話すことはねぇ」
「・・・・・・ふむ」
じいさんは一息すると、急に優しげな目つきになった。
「まぁ、そう言いなさるな。
お主達を出してやろうとしているんじゃから」
「はぁ!?」
俺は驚きの声をあげた。
第27話 釈放の条件
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