【第91話】 老人カンダタとサマンオサ
テドンからシャンパーニに戻ってくると
塔には大勢の仲間がいた。今まで見たことがない奴も多かった。親方が緊急に召集をかけたそうだ。
親方に現状報告をすると、親方はとんでもないことを言いだした。
「組織を任せる・・・ってどういうことだ?親方?」
「順を追って話す。 まずはワシがこの組織を作った理由を話さなければなるまい」
「あぁ、それは前から聞きたいと思っていた。 この盗賊団は、ただの盗人の集団じゃねぇ。 国との癒着があるということもあるが、 親方は盗んだ宝を金にかえ、それを貧しい奴らに恵んでいたりした。 何でだ? いったい、何のメリットがあるんだ? 貧民を仲間につければ、盗賊団としての足がつきにくいからということなのか?」
そう、親方は組織に入ったお金のかなりの額を教会や、作物が不作で国に税金を収められない町、貧しい名前のない集落などに寄付をしていた。
もっとも、国が相手の仕事をしているため、資金力も組織はあったことから俺達への報酬も満足いく額が与えられた。だから、親方がそのような寄付をしても誰からも文句が出なかった。 「ワシが、この組織を作ったのは 王族が救うことができない人間を救いたい、 それがきっかけだった」
「王族が救うことができない人間?」
「ワシはサマンオサ出身での。 そこで騎士団の団長をしていたことがあった」
親方がサマンオサの出身だということは聞いていた。
正規の騎士出身だったんだな。盗賊の戦いを親方には教え込まれたが武器の基本的な扱い方、攻撃の受け流しなど俺が兵士時代に学んだ正規兵の動きがとりいれられ、それを盗賊流に改良したものだった。
また、使ったところは見たことがないが、親方は背中にはいつも大剣を背負っている。ゼネテスのような大柄な戦士がもつならともかく、一般的に盗賊が持つには適さない武器だ。
「ワシは若い者に武器の扱いを教えたり、 時には他国との外交も行った」
「だから、ロマリア王と面識があったり、 他国の人間と交流があったんだな」
「そうじゃ。 いろいろな国を回ったわい。 だがワシも年じゃ。騎士団の引退は前々から王に申し出ていた。 後継者も既にいた。 サイモンという男だ」
サイモン・・・俺も名前は聞いたことがある。確かサマンオサの勇者だ。アリアハンのオルテガと同じくらい有名だ。
「だが、王がなかなかやめさせてくれなくての。 サイモンも同様だった。 騎士としての腕は確かだが、なかなかの堅物での。 奴は人との交渉が苦手であったため、 他国との交渉にはどうしてもワシが必要ということで この老いぼれをなかなか辞めさせてくれなかったのじゃ」
確かに。人との癒着は、すぐにできるものではない。親方は人との交渉も抜群にうまい。
それは親方の過去に作り上げた人脈だけではなく親方がもつ話術や人の心理を読む交渉術に長けていたからだ。
「ワシが交易品の輸入出について交渉をするため エジンベアという国にいったときの話じゃ」
エジンベア。確か北西にある島国だったな。貴族が多く、芸術化なども多いことから美術品などが高く取引されていたはずだ。
いったい、そこで何があったんだ。
第92話 貧富の差
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