【第413話】

最後の戦い


父の亡骸を弔うこともできず

私は心を鬼にして先に進むことにした。


キングヒドラがいたということは、大魔王は近いはずだ。


先ほどはキングヒドラの存在で気付かなかったが

誰もいないところでも、プレッシャーを感じる。




私は歩きながら考えた。

父を殺したキングヒドラが憎くないといえば、嘘になる。

しかし憎しみは何も生まないことをわかっているし、

それ以上に悲しさが大きかった。


何故人間と魔物は戦いつづけるのか。


はぐりんが言った言葉を思いだす。


”どっちが悪でどっちが正しいのだろうね?”


旅を出たすぐは人間を襲う魔物を悪だと決めつけていた。

しかし今は考え方が変わってきている。

人間と魔物、どっちが悪というのはないのかもしれない。

アークマージが言うように、一部の魔物にとっては人間は家畜なのかもしれない。

動物の世界は弱肉強食であり、それによって世界が成り立っているのもまた確かである。


また人間に非がないとも言い切れない。

魔物同士を闘技場で戦わせたり、遥か昔にははぐれメタルの持つ宝を手に入れるため、

人間が狩りをしたこともある。

どれも人間の私欲を満たすための行為だ。


これから先、人が刻む歴史があるとすれば、

一つ一つの命をどのように扱っていくか、私達人間は考え直さないといけない。

私ははぐりんから、それを教わった。


しかし魔物を操り、力と恐怖のみで世界を征服しようとするゾーマやバラモスのやりかただけは間違っている。

自分達が住む世界を守るために、私が止めなければいけない。


通路を進むにつれて、プレッシャーは強くなる。

今までにこんな巨大なプレッシャーは感じたことがない。

大魔王が側にいるのだ。

胸を締め付ける。


でも、大丈夫。

そう自分に言い聞かせる。


私は戦う目的を忘れていない。

どんなことがあっても、私は恐れない。


これが最後の戦いだ。


私は祈りの指輪をはめ、魔力を回復した。

そして王者の剣を抜刀し突き当たりにあった階段を下りていく。




辺りは暗かった。

ただ、暗かった。


先ほどまで感じていたプレッシャーが階段を降りる途中から消えていた。

油断させるための罠か?


階段を降りた場所はただ闇があった。


しかし突如、忘れかけていた感情が広がる。

驚愕・恐怖・死への臭い。


私は震えそうな体を抑え、身構える。

そして闇に問いかけた。


「あなたが…ゾーマね」


低く感情のない声が返ってきた。


”そう、余が大魔王ゾーマだ”


第414話 闇

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