Peppermint Breezeに行きます! Pastel Midilinに行きます!
リンクについてはこちら♪
リディア同盟とは リディアイラスト リディア小説
リディア会員名簿 掲示板
リンク
 
 

 
【32、和解】

  四天王を倒し、様々な思いを抱いたセシル達だったが、ゆっくり考え込んでいる時間などなかった。巨人を止めるためには中心部の制御システムを破壊しなくてはならないのだ。
  吹き抜けに通路を通りぬけると、そこには制御システムがあった。どうやらここが中心部のようである。
「で、でけえ!」
  制御システムは大きな球状をしていた。その両側にはそれよりやや小さめのやはり球状の装置があった。
「防衛システムと、迎撃システムだ。」
  セシル達が近づくと、それはけたたましい警報を鳴らした。
「よし!一気に叩くぜ!!」
  エッジが一番大きな制御システムにかかろうとするのを、フースーヤは止めた。
「制御システム本体よりも、まず防衛システムを叩かなくては回復されてしまう!焦りは禁物だ!!」
  ここはフースーヤに従うのが一番であろう。エッジはフースーヤの言うとおりに防衛システムから攻撃した。そしてそれは思ったよりも簡単に破壊できた。
「次は制御システムを破壊しよう。少々頑丈だが先に迎撃システムを壊してしまうとやっかいな攻撃をしてくるから仕方あるまい。」
  セシル達は思いっきり制御システムを叩いた。リディアは得意の召喚魔法で幻獣を呼び出したい所だったが、制御システムはすぐにリフレクを唱えて魔法攻撃を跳ね返すようにされたので、ここは武器で叩くしかなかった。時間はかかったが、どうにか制御システムも破壊することができた。残りの迎撃システムは一番破壊しやすく、セシルが2回剣で叩いただけで破壊されてしまった。
「やった!」
「動きが止まったぜ!」
  セシル達が喜んでいる所へゴルベーザがあわてて駆け込んできた。
                     ☆
  ゴルベーザはセシル達に怒りの言葉を発していた。
「おのれ!よくも巨人を!!」
  ゴルベーザの顔を見たフースーヤは彼に近寄っていった。
「お前はやはり・・!!」
  ゴルベーザはフースーヤを突き飛ばそうとした。
「貴様には用はない!どけ!!」
  しかしフースーヤはたじろぎもせず、ゴルベーザをまっすぐ見据えて語りかけた。
「愚かな!自分が何者なのかもわかっていないのか?!」
  フースーヤは片手をあげて何か念じはじめた。
「や、やめろ!!」
「目を覚ますのだ!!」
  まばゆい光がゴルベーザの顔を照らした。その端正な顔立ちにはひどく険があったが、フースーヤの拳から放たれた光をあびているうちに、次第に穏やかな表情に変っていった。やがてゴルベーザは静かに言った。
「私はなぜあんなに憎しみにかられていたのだろう?」
フースーヤはそれを聞き、うなずいた。
「自分を取り戻したのか。父のことは覚えているのか?」
「父・・クルーヤか・・?」
  ゴルベーザの口からははっきりとその言葉が聞こえた。セシルは一瞬わが耳を疑った。
「何だって?!」
  フースーヤはそれを念押しするかのように言った。
「セシル、聞いたであろう!ゴルベーザはクルーヤのもう1人の息子なのだ。私もうすうす感じてはいたが、この目で見るまで確信が持てなかったのだ・・。」
  セシルはまだ動揺していた。ゴルベーザがゼムスに操られているだけだと知ってから彼に対する憎しみは薄れてはいたが、まさかこんなことだとは予想もつかなかった。
「あなたはセシルの・・!」
「お兄さんなの?」
  ゴルベーザを見るローザとリディアの目は優しかった。ゴルベーザのほうも戸惑っていた。一体自分は何をやっていたのだ。そんなゴルベーザにフースーヤは事情を説明した。
「お前はゼムスという悪しき月の民のテレパシーで操られていたのだ。お前に流れるクルーヤの月の民の血が、より、それを増幅させていたのだ。まさか兄弟で争わせるなどとは・・!!」
  フースーヤはゼムスの卑劣さに怒りをあらわにして拳をふるわせていた。がっくりと落ち込むフースーヤにエッジは駈け寄った。
「おい、じいさん!さっき無理な力を使ったわけじゃないだろうな?」
  心配そうに駈け寄るエッジに、大丈夫だと、フースーヤは首をふった。
「僕は実の兄を憎み・・戦って・・。」
  セシルはゴルベーザに近寄った。以前彼と戦った時に彼に邪悪な印象を受けなかった。それはもしかしたら自分の中に流れるクルーヤの血が教えてくれたのかもしれないと思った。ゴルベーザのほうもセシルを見た。その目は限りなく優しかった。
「お前は私の弟なのか?」
「もしかしたら僕のほうがゼムスに利用されたかもしれない。僕がゼムスのテレパシーを受けていたら・・。」
  ゴルベーザはそれを聞き、なおも優しくそれに答えた。
「私が操られていたのは私が少なからず悪しき心を持っていたからに相違ない。しかし実の弟を殺させるような真似をしたことは許せぬ!!」
  ゴルベーザは立ち上がった。
「どこへいくの?」
  リディアが心配そうに尋ねた。せっかく兄弟が和解できたというのに、一体何をするつもりなのだろう。
「この戦い、私自らの手で決着をつける!!」
  フースーヤは立ち去ろうとするゴルベーザを追った。
「待て!ゼムスも月の民の1人。私も一緒に行こう!」
  フースーヤもゴルベーザと同じ気持ちなのだろう。2人はお互いに目で会話をしてうなずいた。
「わかりました。一緒にゼムスを倒しに行きましょう。それではさらばだ、セシル・・。」
  ゴルベーザはセシルの顔をもう一度見直すと、すぐにきびすを返してフースーヤと一緒に行ってしまった。
                     ☆
  なすすべもなく呆然と突っ立っているセシルに、仲間達が話しかけた。
「おい、兄貴もじいさんも行っちまったぜ!」
「あの人命をかけるつもりだわ!」
「セシルのお兄さんでしょ!後を追わなくていいの?」
  皆の暖かい声にセシルはやっとうなずいた。
「僕も行くよ!」
  セシルの決意に皆が満足そうに了解した時だった。巨人が揺れ始めた。おそらくこのまま巨人は爆発してしまうだろう。
「や、やべ!」
「逃げないと!」
  しかし出口がわからない。4人がおろおろしていると、そこにカインが現れた。
「おい、出口はこっちだ!」
「カイン!」
  ローザは喜んだが、エッジはまだカインに対して不信感を抱いている。
「おい、罠じゃないだろうな?!」
「話は後だ。死にたくなければ来い!!」
  カインはやや強引にエッジを引っ張った。セシル、ローザ、リディアもそれに続いた。彼らが巨人から脱出して数百メートル離れた所で巨人は爆発をはじめた。
「くそ、間に合わなかったか!!」
  カインが万事休すとひざをついた時、長く美しい金色の髪が彼ら5人を守るようにまきついてきた。そして彼らは優しい風と共に地上へと降ろされる。
「ありがとう、バルバリシア!!」
「これで借りは返したよ!!じゃあね。」
  バルバリシアは皮肉な笑みを浮かべて、風と共に去っていった。
「素直じゃない女だな、全く!!」
  カインは、バルバリシアが心では精一杯お礼を言っているような気がしてならなかった。
                     ☆
  セシル達は魔導船に乗り込んで話をすることにした。エッジは仏頂面であった。
「やっと正気に戻ることができた。本当に申し訳ない。許してくれなどとは言わんが・・。」
「当然だろ!てめえのせいで巨人が現れたのも同然だからな!!」
  エッジが冷たく言い放つと、ローザがカインをかばった。
「やめて!ゴルベーザも正気に戻ったから術が解けたのよ。カインが悪いわけではないわ!!」
「本当に悪いのは、ゼムスだって分かっているでしょ。」
「けどよ・・。」
  エッジも事情を理解していないわけではない。だが、彼も言わずにはいられないのだ。
「また操られないとも限らねえ!その時はどう責任取ってくれるつもりだ?!」
  カインはエッジの目を見て言った。
「その時は遠慮なくこの俺を斬るがいい!!」
  カインのこの言葉にエッジも一応納得したようだった。
「ところでゴルベーザが正気に戻ったというのはどういうことだ?ゼムスというのは?」
  ローザが説明した。ゼムスという悪い月の民によってゴルベーザが操られていたことやゴルベーザがセシルの兄だったことを聞くと、カインは衝撃を受けながらも強くうなずいた。
「ならばこの俺もそのゼムスに借りを返さねばならぬ!俺も月へ行こう!!」
  カインがそう言うと、エッジも負けずに言った。
「てめえばっかりにいい格好させられるか!この俺も月へ行くぜ!!ゼムスのクソッタレに一太刀浴びせねえと気が済まねえ!!」
  セシルは立て続けに色々なことがあったせいで、どうすべきか悩んでいたが、こうなると女性2人のことが気になる。
「僕も行くよ。兄のことも心配だし、僕も月の民の一員だからね。でも、ローザとリディアは残って欲しい!!」
「えっ!」
  ローザとリディアは当然自分達も一緒に行くものだと思っていたので抗議の目をセシルに向けた。
「そんな!」
「ひどいよ!!」
「僕達3人だけでいくよ。今度という今度は生きて帰れる保障はないからね!!」
  セシルは女性である2人を危険な目にあわせたくないのだ。ローザやリディアにもその気持ちは分かる。だが承知できない。
「セシル、足手まといにはならないわ!」
  ローザはセシルにすがるように言ったが、セシルはさらに強い口調で彼女に言った。
「魔導船を降りてくれ!!」
  ローザは穏やかなセシルらしくない強気な様子に驚き、何か言いたそうではあったが、魔導船から降りていった。次にセシルはリディアを見て、それからエッジを見た。エッジはセシルを見てうなずき、リディアに迫った。
「さ、ガキはいい子で留守番していろ!!」
「あたしも行く!!」
「聞き分けのねえガキはこうだ!!」
  エッジは無理やりリディアを抱え上げて魔導船から降ろした。
「エッジのバカ!!」
  リディアの声が聞こえてくる。
「さあ、行くか!!」
  3人がクリスタルに話しかけようとすると、また誰かが魔導船に乗り込んできた。
「ちょっと待ってよ!!」
  今度はニコラが現れた。カインが何のつもりかと、尋ねると、ニコラはセシルに一振りの剣を渡した。実に見事な輝きを放つ剣である。
「ククロさんから頼まれたのを持ってきたよ!見事な剣じゃないの?」
「へえ、これがドワーフの鍛えた聖剣か。すげえな!!」
  エッジはその剣にすっかり魅入っていた。少し軽めなので投げても使えそうである。同じく聖剣である光の剣に比べても輝きが全然違う。
「ニコラ、あんたは本当にこれを渡しにきただけなのか?」
「そうよ。それ、エクスカリバーってククロさんが名づけていたわよ。大事に使ってね!!」
  ニコラはそう言って魔導船から降りかけた。
「あ、そうそう!食料も必要だよね。貯蔵庫に色々積んでおくからちょっと待っていてね!!」
  ニコラが思い出したようにそう言うと、シドの弟子達やドワーフ達が魔導船に色々と積みはじめた。それが終わるとニコラ達は降りていった。
「何かやけに量が多かったような気がするが・・。」
「お酒とかも積んでおいたからね。いざという時は燃料になるし・・。」
  ニコラはそう言ってやけに楽しそうに魔導船から降りていった。
                     ☆
  魔導船が月に着陸すると、セシル達3人も、月に降りようと出口までやってきた。すると、どこからかローザがやってきて、セシル達の前に立ちふさがった。
「連れて行ってくれるまでここを通してあげないわよ!」
  さっきのお返しとばかりにローザは強気になっていた。
「ローザ、どうしてここに?!」
  もっともどういうことなのかは何となくわかっていた。ニコラにしてやられたのだ。彼女たちが運んできた食料の袋の中にでも紛れ込んでいたのだろう。
「もう置いてきぼりは嫌なの!私はあなたについていきたいの!!」
「ローザ、僕は君を危険な目に合わせたくないだけだ。どうしてわかってくれない?」
「わかっているわ。あなたのその気持ちはうれしいわ。でも私はたとえどんな危険な所でもあなたと一緒にいたいの。あなたを愛しているから!!」
  ローザの必死なまなざしを見て、セシルは観念した。セシルは、ローザが言い出したら聞かない性格だったことを改めて気付かされたのだった。
「わかったよ。君がそこまで言うのなら一緒に行こう。たとえどんな危険な所でも僕が君を守りきってみせる。僕も君を愛しているから?」
  2人はしっかりと抱き合った。エッジは少しばかりうらやましい気がした。
「お熱いねえ!」
  エッジとカインが目のやり場に困っていると、その後ろから咳払いが聞こえてきた。
「その、邪魔するつもりじゃないけど・・。」
  リディアだった。エッジはジロッと彼女をにらんだ。
「どうしておめえまで乗っている?!」
「そんな怖い目でにらまないでよ!あたしだってエッジの側にいたいのに~!」
  エッジはそれを聞くと真っ赤になった。
「おい、おめえ、それ本気か?」
  エッジがそう言うと、リディアはたまらなくなって吹きだした。
「冗談よ!ニコラさんが『エッジを説得するにはこの方法がいい』って言ってくれたから!!」
「こいつ!!」
  エッジとリディアは追いかけっこをはじめた。リディアはやがてそれに疲れると、セシルに向かって真剣な顔つきで言った。
「これは皆の戦いだって前に言ったよね。だからあたしも一緒に行く。それに幻獣達も一緒に戦いたいって言っているもの。エッジのことも放っておけないし・・。」
  リディアの強いまなざしにセシルはうなずいた。彼女は大丈夫かもしれない。彼女ははかなげに見えるけれど、その心は剣のように強いことをセシルは知っているのだ。
「エッジ、彼女を守るのは君の役目だよ。」
  セシルはそっとエッジにささやいた。エッジはまた顔を赤くして、おうっと、うなずいていた。

第33話 「幻獣神バハムート」
第31話 「よみがえった四天王」に戻ります
小説目次に戻ります