【戴冠式の夜 Phase 1】
「どうしたの?セシル」
「いや…兄さんの声が聞こえたような気がして…」
「何て…?」
「気のせいだよ。たぶん…」
「何じゃあ!二人ともまーだこんな所におったんか!折角の晴れの日に、何をしとるんじゃ!」
「ごめんなさい、つい」
「まったく!イチャつくのは、これからイヤというほど出来るわい!ささ、ローザ!いやいや、お妃様じゃったか!」
「いいわよローザで…」
「そうか!?ではローザ!花嫁たる者、化粧が肝心じゃ!メイドに用意させておる!さ!急がんか!」
「ええ!」
「みんなに会うのも久しぶりね。そろそろ来る頃よ!セシルも急いでね!」
「ああ」
「聞こえた…確かに…兄さんの声で…さよならと…」
From Epilogue...
僕はこの夜、正式なバロン王として任命されることになった。
そしてローザとも結婚することになった。
「いよいよね…セシル、緊張してるの?」
「緊張…してるね」
「誰だってそうよね。私も緊張してるの」
「お互い様じゃないか」
「ふふ、そうね」
しばらくして1人の男が入ってきた。
「よう!」
僕たち2人は手を挙げる。
現エブラーナ国王、エドワード=ジュラルダイン。エッジが入ってきた。
「エッジ、久しぶりだね」
「いろいろあったけどよ、ちゃんと来たぜ」
そう言ってエッジはローザの隣に来る。
「ローザも色っぺぇし…」
「エッジっ!」
「こぉらぁ!エッジっ!ローザになんてことするんじゃいっ!」
シドが異常に怒っていた。そうかもしれない。
「なぁに、冗談だって。今夜は楽しいことになりそうだな。期待してるぜ」
「ああ、待っていてくれ」
「まったく…」
「ジオット王!」
「セシル殿、このような戴冠式に我々を呼んでくれるとは…」
地底ドワーフ国の王、ジオットと娘のルカが入ってきた。
「いろいろ助けられましたよ。むしろ僕たちより頑張ってくれましたから」
「セシル様、ローザ様とお幸せにね」
「ありがとう、ルカ」
ジオット王はさらにエッジにも声をかけていた。
「エブラーナ王のエッジ殿、お久しぶりでございます」
「おう、いろいろ…世話になったな。ありがとよ」
「ルカ、もう下がるぞ」
「はい」
この親子も幸せに暮らしてるんだろうね。
「セシル、緊張もほぐれてきたんじゃない?」
「そんなことないさ。まだピンピンだよ」
「そうかしら?私はもうほぐれたわよ」
「ローザは緊張感がないんだよ…きっと」
「な…なによっ!」
「ははは、冗談だって」
「もうっ…」
「セシル殿、本日はお招き頂き、光栄であります」
「ヤン、そんな言葉遣いいらないよ」
「そうよヤン、私たちは仲間でしょ」
「はっ…拙者もファブール王として国の復興を目指しております」
「バロンからも何か贈り物をしよう。ローザ、ヤンに…」
「ええ。少ないですが、バロンからです」
「ありがたい…それでは…後ほど」
「ええ」
「あんちゃん!」
「パロム!元気なのはいいけど」
「へへーん、ここが王座かい!どれどれ」
「こら、パロムっ!」
ポカッ。
「いてっ…なんだよポロムっ!」
「なんてことしてるのよっ!今日はセシルさん達の戴冠式でしょ!」
「たいかんしき…なんじゃそりゃ?」
「王様になること!セシルさんは王様、ローザさんはお妃!」
「ほーってすごいのかそれ?」
「パロムっ!」
「まぁまぁ…ポロム、いいさ」
「ですが…」
「1人くらい元気な人がいたっていいわよ」
「すみません、お二方…」
「気にしちゃいないよ」
「おお、セシル殿」
「長老、僕たちはこのようになれました。お世話になりました」
「いやいや、世界を救ったのはセシル殿達ですからな。パロムとポロムも今回のことで勉強にはなったでしょう」
「ありがとうございます」
「ローザ殿、セシル殿と幸せに…」
「ありがとうございます、長老様」
「ほら、パロム、待つわよ」
そう言ってポロムはパロムを引っ張っていく。すると。
「お、おまえ見たことないな、おいらパロムって言うんだ」
「パロムっ!!」
強引にパロムを引っ張っていく。ちなみにパロムが話しかけた(ナンパ?)のはドワーフ王ジオットの娘、ルカだった。
続いて入ってきたのは、ダムシアン王、ギルバート=クリス=フォン=ミューア。
「セシル殿、本日は…おめでとうございます」
「ギルバート、堅苦しいのは嫌いなんだ。いつも通りでいいさ」
「しかし今日は…」
「いいのよギルバート。普通に接して」
「はぁ…ダムシアンから幾分かのお礼の品を持って参りました」
「お礼だなんて…僕たちにはありすぎます」
「セシル、もらっておいたら?」
「しかしダムシアンは今復興中…」
「構いません。どうぞ、お受け取り下さい」
「バロンとして何かギルバートに贈り物を…」
「そうね。飛空挺でもあげたら?」
『ええええええっ!?』
その場にいた全員が声を上げた。
「ローザ、それは!」
「エンタープライズのかわりなんていくらでもあるんでしょ?ね?シド」
「作ろうと思うと1年かかるぞい…」
「よし、決まり!バロンからダムシアンへは飛空挺を差し上げます」
「そ、そんな大層なもの…もったいなさすぎます」
「ローザ…」
「いいでしょ、セシル」
「…僕としては構わないけど」
全員が唖然となる。やっぱり飛空挺は規模が違うからね。
「ありがとうこざいます…それでは…」
「ええ、あとでね」
「…ローザ、大胆すぎるよ…」
「ダムシアンが復興したらまた作ればいいじゃない…」
なんでもありなんだね、ローザ。
「セシルっ!ローザっ!」
この声がした瞬間、エッジが明日の方向を向いた。
「リディア!また…老けた?」
「もう…老けたはないでしょ…でもちょっと歳とっちゃったかな…」
「幻界じゃ時間の流れが違うんですもの…歳とってもおかしくないわね」
「でもそんなに歳とってないでしょ?ね?」
「ああ、ローザもリディアも綺麗だよ」
「…そこでどうして私が出てくるのよ…」
「ここで、リディア、綺麗だよって言ったらローザどうしてた?」
「たぶんムッとしてたわ」
「だろ?だから2人出したんだ」
「あはは…ローザ、化粧して綺麗ね…私もいつかお嫁に行きたいな…」
「幻界での生活はどうするんだ?」
「アスラとリヴァイアサンに頼んできたの。私人間だし…でも幻獣だって同じだから…」
「そうね、幻獣も人間も一緒よね」
「ああ、その通りだよ」
「だから、幻獣だって洞窟から出てきても良いと思う、って話したの」
リディアが勝負に出た…確かにそのままだったら僕たちの戴冠式と結婚式を見られずに死ぬんだから…
「そしたら、ミシディアにでも住みたいって言ったんだよ!」
「幻獣がミシディアに!?」
「長老様、彼らとの話はできるでしょう?」
「ええ、できますとも。必ずや、生活を保障致しましょう」
「わーいっ!この式終わったらみんなに知らせてくるね!それじゃあ一度下がるね」
リディアは踵を返して下がる。その途中で明日の方向を向いているエッジが気になって声をかけた。
「…何赤くなってるの?」
「べ…別に何でもねぇよ…」
「…変なの」
エッジはリディアを見て赤くなっていた。
僕はエッジも恋をしてるんじゃないかと思った。
リディアもエッジもヤンもギルバートも、ジオット王もミシディアの人たちも元気だった。
ただ…親友のカインの姿はなかった。
「カイン…来なかったわね」
「ああ…どうしたんだろうな…」
「あー。これより、セシル=ハーヴィとローザ=ファレルの戴冠式および結婚式を行うっ!」
シドの声と共に始まった。