閉ざされた隠し階段
黄金の爪を手にとった親方はとりつかれ、
次々と仲間達を殺していく。
ゼネテスは深手を追いながら、親方を食い止める。
俺とトールは必死に逆の道に走った。
早く出口を見つけ、魔法が使えるところまで戻らなければ。
後ろから金属の衝撃音が聞こえる。
親方とゼネテスが戦っているのだ。
突き当たりを曲がり、さらに走ると上に階段があった。
「あったぞ!!!」
しかし一瞬で希望は消される。
上に階段はあるが上の階層は見えず天井で階段が途切れている。
「どういうことだ・・・」
これでは上れない。
「おそらく、隠し階段なのでしょう。
普段は上の階層からこの階段が隠されているから
上から開ければ上の階層がみえるのです。
しかし私達はエビルマージの魔法でこの部屋に直接飛ばされたので・・・」
「閉じ込められたわけか・・・」
どうする。
他に出口を探すか?
しかし、逃げてくる間に他に階段らしきところはなかった。
見落としているだけかもしれないが。
やはりここから出るしかないだろう。
上から床をずらすのはそれほど難しい作業ではないが
下から上にある天井をはずすのは見上げながら行うので難しい作業だ。
さらに重たい石でできているので上から天井や他のものも崩れ落ちてくるしかない。
「トール、手を貸してくれ!」
「はい!」
俺はトールに自分が持つショートソードを貸した。
トールはショートソードを天井の隙間にさし、テコの原理を使って壁を動かそうとする。
俺は両手を天井にあて、持ち上げながら天井を動かそうとする。
「クッ・・・」
「ウッ・・・」
トールと二人でなんとか天井を動かそうとする。
「お、重い・・・」
もしかしたら、上に何か乗って動かないのかもしれない。
だが、ここであきらめるわけにはいかない。
早く通路を確保してゼネテスを助けにいかなければ。
遠くでまだ激しい金属音が聞こえる。
ゼネテスがまだ耐えている証拠だ。
「ヌ・・・ヌォオォ!!!」
俺は血管が切れるのではないかと思うほど力を入れ、
天井を動かそうとする。
ズズ・・・
少し動いた。
ズズ・・・
また動いた。
俺の体中から汗が吹き出てくる。
四分の一くらい開いた。
だが、まだ人一人が通れる隙間がない。
せめて半分あけば・・・・
「ウッアアァァァ!!!」
俺はさらに力をこめた。
筋肉が痙攣している。
だがここで力を弱めるわけにはいかない。
ゼネテスに助太刀し、親方を正気に戻さなければ。
全身の血管がぶちきれそうなくらい力をこめると
ぎりぎり体が入りそうな隙間があいた。
「・・・・やった!」
歓喜の声をあげた。
”ギャァァアアアァ!!!!”
瞬間、断末魔が聞こえた。
今の声は・・・ゼネテスか?
第132話 葛藤 (執筆完了)
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