未知なる可能性
どこまでも落ちていく。
このままの速度でもし、地面に落ちたら、
間違いなく即死だ・・・・・
決して、考えがなくて飛び込んだ訳ではない。
落ちながら、はぐりんにそう呼びかけながら
私は精神集中し、体中の魔力を高める。
ルーラの力の応用だ。
ルーラとは、本来、目的の場所をイメージして、
そこへ瞬間移動する方法だが、
実際は、ワープをするというわけではなく、高速移動なのだ。
空を自由に飛ぶことができる魔法は
まだ今現在、編み出されていないが、
ルーラで高速移動をできるということは
これは、人間が魔法を使い、空を自由に飛べる可能性を
秘めていることになる。
ただ、魔法とは、魔法力の他に、各精霊と”契約”を交わさないと使うことができない。
メラを使うには炎の精霊と・・・・のように。
私は、ギガデインを超える膨大な魔力を体中に集中させる。
一度もこんなことは試したことはないし、
「魔法」ではなく、「魔法力」だけで
空中で身動きをとろうとしているのだから。
すざましい脱力感に襲われる。
ダメだ・・・・・ちょっとでも気を抜くと意識を失いかねない。
あきらめず、常に魔力を放出し続ける。
・・・・だんだんと・・・・落ちるスピードが遅くなってきた。
「チェルト、すごいよ!」
はぐりんの驚きの声が聞こえる。
その声にこたえたいが、話せない。
私は、汗ばんだ顔で、どうにか作り笑顔で、はぐりんをみる。
その顔をみて、はぐりんがはしゃぐのをやめる。
私がつらいのがわかったのだろう。
ごめんね・・・・はぐりん・・・・
私はさらに、魔法力を出し続け、落下速度をおそめる。
そのまま、私たちはいつ果てるかわからない
暗黒の闇を下っていった・・・・
ん・・・・・
はぐりんの声で目がさめる。
どのくらいたっただろうか・・・・・
「よかったぁ~
気が付かないかとおもったよぉ~~」
「そっかぁ・・・・
気、失っちゃったんだ・・・・・
でも、なんとか、無事に降りることができたんだね」
地面に静かに降りたことは覚えていた。
だが、それと同時に、魔力を使い果たし、
気を失ってしまったんだ。
「チェルト、すごかったよぉ~~
人間って、あんなことできるんだねぇ!!!」
空を自由に飛べるというほどじゃないけれど、
なんとか、落ちるスピードを押さえるくらいはできるんじゃないかと。
「今の私なら、きっとできると思っていた。
でも、さすがに・・・・・疲れちゃった・・・・」
「うんとねぇ、あっちにお家があるんだよ!」
「家?」
「うん!
さっき、チェルトが気を失っていたとき、
みてきたんだ。いわゆる、偵察っていうやつ!」
「心強いパートナーだね」
本当にそう思った。
はぐりんは、はぐりんなりに
必至に自分ができることをしようとしている。
私一人だけじゃないんだよね。
急に勇気がわいてきた。
「ここで、少し休んでいたいけれど
でも、家があるんなら、きっと人間がいるかもしれない。
もしかしたら、魔族かもしれないけれど。
少し休んだら、そこに行こう」
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