【第194話】
オルテガの噂
きっと、人違いだと思う。
ただの偶然だ。
同じ名前の人なだけだ。
まさか、お父さんがこの世界にいるなんて・・・・・
お父さんは・・・・死んでしまったんだ・・・・
いつもは、絶対に希望を捨てない。
だから、常にお父さんが生きていると思い、戦い続けてきたのだ。
けれど、上の世界での、火口で
現実をはっきりと見つめてしまい、お父さんは死んでしまった・・・・
ずっとそうだと・・・・・思っていた。
だから、いくら、生きていて欲しいと思っていても、
さすがに、私は、その言葉を聞いても、
お父さんとが生きているとは思えなかった。
そう思いこんでいたから。
あまりに突然だったから・・・・・・
「・・・・・・・オルテガ・・・・・・ですか?」
私はかすれるような声で聞いた。
「あぁ・・・・確か、そうじゃ。
もうかなり前のことじゃがな。
このラダトーム近くに、大けがをして倒れておったのじゃ。
生きているのが不思議というほど、重傷じゃったらしい。
儂もその大けがをしたときに会ったわけじゃないのでな。
人づての噂じゃが。
オルテガと会ったのは、傷が治ってからだ。
その傷を治すのに、半年もの月日がかかった。
旅の者に手厚く看護を命じたのは儂でな。
その礼を言いに来たのだ」
「その、オルテガという・・・・ものは・・・・どういう方でしたか?」
「そうじゃな・・・・・
普通の戦士とは、明らかに違ったの。
強い戦士がもつ、独特な”気”をもっていた。
儂も、昔は戦士じゃったからの。
そういうものは見分ける力はあるつもりじゃ。
あと・・・・強さと同時に、民にもよく好かれていたようじゃな。
子供にも人気があり、しばらく剣の稽古などもつけていったそうじゃ」
「オルテガの・・・・下の名前はわかるでしょうか?」
私は、この質問を聞くのをためらった。
もし・・・・・同じであれば・・・・・
「すまん、さすがにそこまでは聞かなかった」
「・・・・そう・・・・・ですか・・・・・」
第195話 2つの心
前ページ:第193話 「力の盾」に戻ります
目次に戻ります
ドラゴンクエスト 小説 パステル・ミディリンのTopに戻ります