賊の脱走
ルーラを使い、ラダトームに戻ってきた。
しかし、ラダトームの町では、喧騒が起きていた。
「なんて奴だ。
あれだけの門番を、全部倒すとは、化け物か!」
騒ぎがあった町の中心街にいくと、
そこにはたくさんの兵士が、倒されていた。
息はあるようだが、兵士さんの鎧がくぼんでいる。
「大丈夫ですか?」
「はい・・・・あ、チェルト殿!」
その兵士さんは、私の草薙の剣と誘惑の剣を預けてある
武器倉庫の監視役さんだった。
「どうなさったのですか?」
「実は、ラダトームに太陽の石を盗もうという賊が以前入りまして・・・・」
以前、盗むつもりはなかったのだが、
太陽の石で、賊に間違えられた私としてはちょっと複雑な気分もあった。
「しかし、その賊は、そのときにどうにか捕まえたのです。
まぁ、もっとも太陽の石はチェルト殿が持っているので、
もうここにはないといったら、そいつが投降してきたのですが」
「・・・・・・逃げられたのね?」
「えぇ・・・・まぁ、特に捕られたものはないのでいいのですが、
しかしこれだけの兵士を、たった一人の賊にやられたとなっては
王宮の兵士としては申し訳が立ちません」
確かにそうだろう。
信用として、民衆の支持など落ちるのは心配かもしれない。
「しかし、なんで、また太陽の石なんか、盗もうとしたのかしらね・・・」
「さぁ・・・・自分が勇者かと思ったのでしょうかねぇ・・・
とりあえず、何人かはその賊をとらえるため、ラダトームから人を出すつもりなのですが、
しかし、精鋭のものを出すと、ラダトームの城も手薄になるため・・・・」
「わかったわ。もし、私が出会ったらとっちめてあげる。
それに、もし太陽の石をねらっているのなら、
私がいつか狙われるかもしれないしね」
「はい、お願いいたします」
いろいろな仮説がたてられた。
一番恐いのが、魔王軍が、太陽の石をねらっていたらということが考えられた。
私に太陽の石を渡さないよう、魔王軍に太陽の石がわたってしまえば、
きっとゾーマを倒す手段はなくなってしまうだろうから。
しかし、魔王軍の手下なら、これだけの多くの兵士を
殺さないでみねうちにしたことも疑問だった。
ただ、太陽の石をねらっていた賊だったのだろうか・・・・
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