【第282話】
大きすぎる代償
激戦の末キングヒドラを追い払う。キングヒドラをどうにか退けたため、残りの魔王軍も退却しはじめた。
大きすぎる代償だった。三分の二の戦士達が死亡、生き残った兵士のほとんどが負傷、魔法使いや僧侶もほとんどがこの戦いで命を落とし、カンダタも右腕を失った。
冷たい雨が振っている。
辺りを見渡せば、人間と魔物の死体がごろごろ転がっている。
なんとか、メルキドの街は守れた。しかし・・・・・・・あまりに大きすぎる代償だった。こうなることはわかっていた。わかっていた・・・けれど・・・・それでも理解できないことがある。
「なぜ・・・・・・ なぜ・・・・こんな目にあわないといけないの・・・・・ なぜ人間と魔物は争わなければいけないの!!!」
雨にあたりながら私は空に向かって叫んだ。
「うっうっ・・・・・・・・・」
涙が止まらない。
自分たちが生き残るために仕方のない戦だった。
戦は様々な理由で起きる。人間同士で愚かな戦が起こることも多々だ。理想の違い、宗教の違いなど互いを尊重することがあっても様々な行き違いが生じる。
しかし最も愚かだと思うのは他人に思想を押しつけ支配することだ。
まさしく・・・・今回の戦いはそうだった。支配されないために戦うしかなかった。
人の死は何度も目の前で見たことがあった。やっぱりつらかった・・・・・・つらすぎた。人だけじゃない。魔物のたくさんの命を自分も奪った。たくさんの命が消えた・・・・・もう失った命は戻ってこない・・・・後には悲しさしか・・・・・残らない。
私は涙を流し、怒りと悲しみのためこぶしを地面に何度もたたきつけた。
第283話 カンダタとの別れ
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