【第296話】
命の剣
「あなた・・・・・ずっと働きずくめですが
大丈夫ですか?」
「あぁ・・・・」
妻は私の汗だくの肌を冷えた水を含んだ布で拭いてくれた。
私の名は、草薙と言う。マイラで鍛冶屋をやっているものだ。
ジパングという小さな島国があった。
小さい国ながらも、自給自足による食物の栽培と祭器による祈りによって天候をあやつりジパングの者は幸せに暮らしていた。
しかし古い書物にも記述されている守り神でもあるヤマタのオロチが現れ生贄を要求してきた。
ヤマタのオロチを倒そうとしたが生きて帰ってきた者はいなく、また女王卑弥呼様は、ヤマタのオロチに従うべきと毎年何人もの若き乙女が生贄を差し出した。その結果たくさんの若い命が失われた。
私と妻は鍛冶屋をしていたが、そのジパングの生活に耐えられず国を抜け出した。しかし地割れに飲みこまれ、私も妻もそこで命が尽きたと思われたが裏の世界、アレフガルドにたどりつき、大怪我ながらも私達は命をつなぐことができた。アレフガルドのマイラの人は私達を手厚く看護してくれた。
その恩返しとして、私はマイラの人のために自分の技術と命をこめて剣を作った。マイラの人が魔物から身を守るための剣だ。
剣とは、ただ鍛えるだけでは完成しない。剣は生き物なのだ。剣を鍛えるものが、命をふきこみ初めて剣ができあがる。私はそう信じている。今まで数えきれないほどの剣を鍛えてきた。
とくにジパングの神剣草薙の剣を鍛えたとき、私は自分のすべてを注ぎこんだ。金属に命を拭きこむのだ。だから剣は生きる。そして剣は剣を持つ主が自分の心と共鳴したとき真の力を発揮する。
私はアレフガルドを救ってくれるかもしれない勇者の為一本の剣を鍛えていた。その方は、現草薙の剣の所有者で、太陽の石の輝きをも復活させた方だった。
その方のために、私はアレフガルドの伝説の神剣、王者の剣を鍛えた。
硬度なオリハルコンは、普通の製法ではまったく溶けることがなかった。
しかし、ラダトームの王城にオリハルコンの製法が過去に行われたことを示す本があったと聞いたため、私は事情を話しその文献を貸してもらい、オリハルコンを溶かすことに成功した。
そして、私は丹念に剣を鍛え、命を拭きこんだだが、剣は蘇らなかった。このオリハルコンでできた剣は物理的に鍛えることができても剣に命が宿らないのだ。
「なぜ・・・・・剣に命がふきこまれないのだ・・・・ 私では力が足りないのか・・・・・ そともそれだけ大きな命をふきこまなければいけないのか。 このままでは・・・・・・剣を勇者様にお渡しできない」
私は再度剣を熱し、剣を鍛えようとした。そのとき、突如空から一本の光りが現れ剣に吸いこまれた。
「こ、これは!!!」
第297話 伝説の神剣の復活
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