【第434話】

勇者の挑戦5


ゾーマを傷つけられることができないのは、古の魔法「結界」があった為だ。

私は王者の剣と聖なる守りの力を借り

光の玉を発動した。


ゾーマの「結界」は消え去り、本当の姿を表した。




”ググッアァァァ!!!!”


ゾーマが苦痛の声を上げる。

障壁の中でバギクロスがゾーマの肉体を斬り刻んだ。

初めて攻撃が命中した!


そのままさらに接近して剣の間合いに入ったが

ゾーマは瞬間移動で姿を消す。

少し離れたところに現れていた。


見た目は流血などが見られない。

そもそも大魔王に血が流れているのかわからないが。

だが叫び声をあげたのならダメージは与えているだろう。


ゾーマは再度手をあげた。

その瞬間私は動いていた。


大魔王が雷を落とす。

轟音が鳴り響いた後、光が消え、"無傷"の私がゾーマに向かう。


”!!!!”


さらに大魔王は次々と雷を落とした。

雷は私に向かって次々と落ちるが、

光が消えると、私は前進する。雷が私を傷つけることはなかった。


”貴様、化け物か!”


化け物に化け物呼ばわれするのは心外だが

確かにゾーマから見れば、私が雷に打たれて無傷なのは信じられないはず。


人間の目ではどれほど動体視力が良くても

雷を目で認識してかわすことは不可能である。


私はゾーマが雷を落とす動作をした瞬間、

剣を床に突き刺し、後方に飛んでいたのだ。

避雷針の代わりに雷は床に刺さった剣に落ち、私はダメージを受けなくてすむ。


そして、落雷が収まった後、剣を抜き前進する。

ゾーマから見れば、落雷に打たれた私が無傷で出てくるように見えたのだ。


ゾーマの力は強い。魔力も神を上回るかもしれない。

しかし私には過去に膨大な戦いの経験がある。

過去の経験から敵に対抗する手段を導き出し体が勝手に動く。


そのまま獣が獲物に噛みつように大魔王に襲いかかった。


大魔王は攻撃をかわそうとしたが、私のほうが速かった。

次の瞬間、大魔王の左腕が宙に飛んでいた。


”貴様!!”


怒りの声をあげる。

しかし私は今の一撃でしとめるつもりだった。

同体をまっぷたつに斬り刻むつもりだが、かわされ、狙いが外れた結果だった。


今の私は一匹の獣である。

ゾーマという悪を刈り取るための肉食獣であり

自分の中にこれほど凶暴な一面を持っているとは思いもしなかった。


ゾーマがマヒャドを唱える。

氷の刃が現れ、私に刺さろうとする。

だが襲いかかる刃を体に届く刹那

次々と王者の剣で破壊した。


ゾーマの表情がさらに変わる。


常人ではできない行為、今の私にはそれができる。

自分が王者の剣と一体になり覚醒するのを感じていた。

私は自分の力を120%出し切っている。


はぐりんが言っていたこと、


「大魔王を越える力」


これがその一つなのだろう。


ゾーマの姿が消える。


唯一回避できない、広範囲の攻撃の吹雪をはくと予測した私は

反射的に弧を描くように180度回転して後ろに剣をふるった。

そこにゾーマが現れ、右腕も切り落とされる。


”グアァアアァァァァァ!!!”


ゾーマが悲鳴をあげたとき、私は次の攻撃にうつっていた。

ライデインを放つ。雷はゾーマを打った。


だがゾーマは抵抗をやめない。

仁王立ちする大魔王。

その額に一本の剣が付き刺さっていた。


王者の剣である。ライデインの発動と同時に

息つく暇を与えず、頭に剣を埋め込んでいた。


ライデインと額にささっている王者の剣でゾーマの体は停止していた。

だが、まだゾーマから殺気は消えない。


私は距離をとり、最後の呪文の詠唱に入っていた。


”何故、我の夢を邪魔をする”


私の体内に魔力がたまっていくことを実感する。


”何故、大魔王の力を越える”


頭上に光の竜達を呼び寄せる。


”何故人間のようなゴミがそれだけの力を持つ”


これで終わりにする。


「ギガデイン!!!!」


何本もの光の竜がゾーマの額にささっている王者の剣に流れ、闇は霧散した。


第435話 親友との再会

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