冒険の書 ⅳ

 ～冒険の書 Ⅳ～ 




           あの戦いが終わってから５年･･････

   アリアハンを旅立った時１８だったオレも２０代なかばか･･･。
   時がたつのは思っていたより早いのかもしれない。
   今の生活にも、もう慣れてしまった。
   毎日好きな魔法の研究をしたり、薬の調合をしては近くの道具屋さんに置いてもらって
その儲けをもらい、生活するお金を確保する。
   たまに普通の毒消し草では治らないような毒をうけた人を治療したり、
呪いをかけられた人の呪いを解いたりと教会まがいのことをすることもしばしば。
   オレが魔法の研究を続けているのは、まだその思いが心の何処かに残っているのかもしれない。
   昔から魔法を研究することは大好きだったため、好きでそうしていることは確かだけど･･････。
   オレの名前はカラ。今はネイムと２人でここで暮らしている。
   ネイムはオレの幼なじみで（･･･よくある話と言わないよーに（汗））
   いちおう･･･彼女になるカナ(汗)
   なにせ、オレはバラモスを倒すまであいつのこと男とばかり思っていたもんナ。

           あの戦い･･･ゾーマとの戦いの後、ラダトームの王様にその報告をすませ、
オレたち４人は姿を隠した。
   人は時とともに忘れる生き物。その時は大騒ぎしてもいずれ、忘れ去られる･･････
今回のオレたちのことも例外ではなく、
朝が来ることがこの世界の人たちの中で当たり前だという思いが
生まれた頃、オレとネイムはここマイラの村に住むことにしたのだった。

「 ･･･ラ。･･･カラ･･･。カラってばぁっ！！ 」

   ヒャうっ！！  なっ、なんだ(汗)

「 カラ、何やってんのさ。ボォ～ッとして。小ビンの中身、溢れてるよ。
   それに、シラスさんと伊吹さんが遊びに来てる。カラも早くこっちに来てネ。
   お茶冷めるよ 」

「 え゛、あうあうあう･･･(汗)  し、しまったぁ！  コレ、貴重なのにぃ･･･ 」

   ネイムが部屋を出て行った後オレは改めて手元を見て慌てた。
   小ビンに納まりきれず消え去り草の粉は机の上に積もっている。
   オレは風で飛ばないようにそっと、それを集めて元の大きなビンの方に戻した。
   しかし、伊吹とシラスさんかぁ･･･久しぶりダナ。この２人が一緒に戦った後のお２方。
   このお２人さんは一所には住まず、各地を行ったり来たりしている。
   年に何回かオレたちの所に来てその旅先の話を色々してくれるのだ。
   オレは作業用の白い長衣をそばの椅子にかけ、居間の方へ向かった。

	－◆－

「 あ、カラ。久しぶりですねぇ。相変わらず アヤシ気な魔法の研究 、やっているのですか？ 」
 
「  アヤシ気 だけ余計だゾ、伊吹くん。でも、研究は楽しいゾ。
   伊吹もど～だ、一緒に？ 実験台役 なら空いてるゾォ？ 」

「 そうですねぇ･･･う～ん･･･。やはりご遠慮しておきます 」

   にっこり、以前と変わらない笑顔で伊吹はオレのじょ～だんに真面目に答えた。
   シラスさんの方もあまり変わらないナァ･･･相変わらず口数少なくて無口。

「 ･･･カラ、以前お前に頼まれていた･･･ 」

「 あ☆ シラスさんありがとう！ それにしても･･･このこと、オレの方が忘れてた(汗) 」

   オレはシラスさんから紙包みを受け取った。

「 ねえ、カラ、それ何？ 」

「 ん、これか？ これは幸せの靴。この靴は、はくと歩くごとに経験値が増えるって話だケド、 
どういう素材で出来ているか知りたくてナ。それに何の経験値が増えるのかってのも気になるもんナ 」

   紙包みを開け、ネイムに見せてやる。

「 でもこれ、はぐれメタルがたまぁ～に持ってるモノでしょ？ はぐれメタル、いたの？ 」

「 いいや。何処でだったか忘れたが、捨て値で買った。
   あまり趣味のいい形ではないようでな、売れ残っていた。
   店の者もそういう効果があると知らなかったようだったしな 」

   シラスさんはシュガーのみのストレートティーを一口飲み言う。

「 ･･･魔物たち、ホント姿消したナ･･･ 」

「 そうですね。僕たち、今まであちこち行きましたが魔物には１度も会ってはいませんよ。
   獣たちには会いましたが、森の中で 」

「 あんなにたくさんいたのに何処に行ったのかな･･･？ 」

「 壁の外に行ったんだよ、きっと。ホラ、船でず～っと行ってたらぶつかる壁の。
   その向こうに行けないオレたちにはその向こうに何があるなんて解らないケド         」

   オレはミルクティーの残りを飲み干して、言いながら魔物たちのことを考えた。

   ５年前、オレたちはゾーマとの戦いに勝利した。
   ゾーマが滅んだ後、アレフガルドに朝が来た。
   この世界の人々の待ち望んでいたものがついに訪れたのだった。
   眩しい日の出の光･･･
   しかしその直後、この世界にいた魔物たちは全て姿を消した。
   魔物として名のあるものはスライムからドラゴンまで全てである。
   彼らは全てゾーマのチカラで造られていたというものではないだろう。
   だから、ゾーマが滅んでそのチカラが消滅したからといって魔物たちも消滅したとは思えない。
   だとしたら、魔物たちは何処に行ったかということになるが･･･        

   オレはあの壁の向こうに行ってしまったのだと思う。
   上の世界では船でズット行けばぐるっと１周して元の出発地点に戻ることが出来た。
   しかしここは違う。
   船でずっと行くと壁にぶつかる。
   その壁の向こうには真っ暗な闇が広がっている。魔物たちはそこに行ったとオレは考える。
   
   オレが考えるトコロ･･････この世界の人には何を馬鹿なと思われるかもしれないけれど･･････
   ここは元々は魔物たちの住む世界だったんじゃないかと思う。
   アレフガルドは精霊ルビスが創ったと言われている。
   ここの世界の人はギアガの大穴を通ってこの地に来たと聞いたこともある。
   つまり、元々、魔物たちの住んでいた世界にルビスはそのチカラで結界のように
この世界の一部を囲み、その中に光りをもたらした。
   今まではゾーマという大きな闇の存在居たために魔物たちはその中ででも生きてゆけたが
ゾーマが滅び、光が強まったためにもうこの中には居られなくなって壁の外に出て行ってしまった･･･
というのがオレの考えのヒトツ。

   ･･･現にアレフガルドの夜は夜でないような夜。
   闇が無いのだ。ただあたりが暗くなるだけの明るい夜。
   だけどこんなこと、絶対に口には出せないよナ(汗)
   ルビスが何だか悪役みたいな風だし、オレ、アレフガルドの人を全部敵に回したくないもんナ。
   この考えはアクマでオレの中だけのもの。

   ヒソヒソヒソ･･････

   ん･･･？ ネイムと伊吹がオレの方を見てヒソヒソしてるケド、どうしたんだ？

「 ん？ どーしたネイム、伊吹？ 」

「 あのね、グーでドツクのとパーでひっぱたくのとどっちにするか伊吹さんと相談してたんだ 」

「 は･･･？ 」

   どーゆうことだ？ オレ、さっぱり意味解らないゾ(汗)

「 ですから、カラが毒蛾の粉をかぶった様なので正気に戻す方法をネイムと話していたのですよ 」

「 を゛いっ！！ なんでそうなるっ！？ オレはずぅ～っと正気だゾ。
   毒蛾の粉なんてかぶってないって！ 」

   冗談じゃないゾ！ ネイムも伊吹も バカヂカラ だもんナ。
   んなヤツらに物理的に攻撃されちゃ、たまったものじゃない。
   オレ、まだ死にたかねーよ。あの２人みたく丈夫じゃねーんだもん、オレ。

「 でも何でオレが混乱してるって言うんだ、お前らは(汗) 」

「 え･･･それは･･････ 」

   ネイムは口ごもる。

「 あなたがめすらしく シリアスな顔 で何やら考えている風でしたので、
それで心配になって･･･ 」

  伊吹は言う。

「 何でそうなるぅ～！ オレのシリアスな顔ってそんなに珍しいのかぁ？ 」

「 はい 」

   かんぱつを入れず、伊吹はうなずいた。
   こいつは昔からこうだったナ(汗) 
   はうぅ～っ･･･話題変えよっと。

「 シラスさん、今回はどれくらいゆっくりできるんだ？ 」

「 ん･･･５日くらいは居るつもりだ。ネイム、お茶をもう１杯貰えないか？ 」

「 あ、はい。ちょっと待ってください。お湯、もう１度、沸騰させてきます 」

「 悪いな 」

   おっし、話題変換 成功！ ネイムはポットを持って台所に行ってしまった。
   シラスさんと伊吹もしばらく居るってゆーし、新たな研究材料も入手した。
   しばらくの間にぎやかになるな･･･いつも以上に(汗)

	－◆－

           闇の中の光の世界･･････

   この先どうなるかオレには解らない。
   ゾーマが死に際に言い残した予言めいたあの言葉        
   おそらく再び同じようなことは繰り返されるだろう。
   光りあるところ、闇もまたある･･･。まさにそのとおりだ。
   上の世界        オレたちの住んでいた世界は光と闇、両方あった。
   朝が来て夜が来る。この夜は本当の夜。
   この間だけは昏い闇が支配する。魔物と人とが共に仲良くできれば
一番いい事だと思うけれど、それはなかなか難しい事。
   でも同じ世界の上で互いに互いの距離を保ちつつ生きていく事なら出来るだろう。
   大切なのはそのバランスだと思う。
   ホントに絶妙な表裏のバランスが
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