九月十四日

午前中をカボチでの会議と馬車の本格修理に取られてしまった。馬車の調子は良 くなったが、会議での「あんたみたいなよそ者」という言葉には腹が立った。 みんながみんなそうではないにしても、その視線を感じることがある。 けれど、子供のために食事を我慢している親もいるらしい。作物の被害は深刻な ようだ。
ここは我慢することにしよう。

海岸沿いの平地を半日飛ばしてくると、洞窟が見える。会議での話からして、こ こが本拠地に違いない。今は夕刻で小休止中。思い切って突入するかどうしよう か考えあぐねている。ピエールは行こうと言っている。





今洞窟から帰ってきた。中は思ったより広い。迷って体力が尽きる前に出てきた。 二階までの簡単な地図を書いたので、明日はさらに奥へ進む。

九月十五日

今は昼飯時。洞窟から出てきて休んでいる。驚いたことに、カボチを荒らす魔物 というのは、チロルだった!
戦おうと身構えたけれども、なんとなく見覚えがあるような気がして、思わず昔 飾りにつけていたビアンカのリボンを取り出すと、大きなキラーパンサーが甘え てじゃれついてきたのだ。

チロルは父さんの剣を守ってここに住み着いていたらしい。ラインハットからど うやってここまで来たのかは分からないけれど、何しろ十数年だ。よく無事だっ たと思う。
父さんの形見の剣を手に入れた。見覚えのある紋章、がっしりしたかたち。なつ かしい。


これからカボチへ戻る。





チロルをつれて行ったのは失敗だった。みんな僕のことを、化け物とグルだった と思っている。もっとつらいのは、怒りをあらわにされることじゃなくて、「金 は約束どおり払ってやるからでてってくれ」といわれたことだった。
ただ、何人か僕のことを信じてくれる人がいるのが救いだ。
明日の朝早くここを発とうと思う。


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