今は昼飯時。洞窟から出てきて休んでいる。驚いたことに、カボチを荒らす魔物
というのは、チロルだった!
戦おうと身構えたけれども、なんとなく見覚えがあるような気がして、思わず昔
飾りにつけていたビアンカのリボンを取り出すと、大きなキラーパンサーが甘え
てじゃれついてきたのだ。
チロルは父さんの剣を守ってここに住み着いていたらしい。ラインハットからど
うやってここまで来たのかは分からないけれど、何しろ十数年だ。よく無事だっ
たと思う。
父さんの形見の剣を手に入れた。見覚えのある紋章、がっしりしたかたち。なつ
かしい。
これからカボチへ戻る。
チロルをつれて行ったのは失敗だった。みんな僕のことを、化け物とグルだった
と思っている。もっとつらいのは、怒りをあらわにされることじゃなくて、「金
は約束どおり払ってやるからでてってくれ」といわれたことだった。
ただ、何人か僕のことを信じてくれる人がいるのが救いだ。
明日の朝早くここを発とうと思う。