信じられない!父さんの仇の一人がいた!あまりに突然だったので、はじめは気
がつかなかった。どうにか倒したが、もう呪文が使えないほど疲れている。いっ
たん回復剤を取りに馬車まで戻ってきた。
おそらく、最後の一人もいるに違いない。これからもう一度地下へ降りる。
生きていたら、夜にこの続きを書く。
「私のことを憶えているか憶えていないか、そんな事はどうでもいい」と言った。
憶えていないわけはない。この目に、瞼に、脳裏にしっかり焼き付いている。
戦いは長期戦になった。魔法戦よりもむしろ肉弾戦だった。焼けつく息をかわし
ながら切りかかり、激しい炎に必死で耐えた。何度か体を麻痺させられて覚悟を
決めたけれど、絶妙のタイミングで仲間が救ってくれた。そしてとどめをさした。
あいつは死んだ。仇を討った!
馬車に戻ってきてもまだ信じられなかった。とにかく疲れていたので倒れこんで、
しばらく死んだように眠っていた。目が覚めるとまだ夜だった。星が明るい。
馬車のむこうでサンチョが泣いているのが聞こえる。