冒険が好きなわけじゃなかった。時には父さんに連れられて、時にはビアンカに
連れられて、時には運命のなすがままに。
ただ、父さんが幼い僕に、冒険日記を書けといってくれたときに、こんな冒険が
綴られると思っていただろうか?
わからない。
ただ、父さんの日記に匹敵するぐらいの大冒険なことは胸を張って言える。
世界は平和になった。マスタードラゴンがいうのだから間違いない。
もちろん、町にわるいやつが完全にいなくなったわけじゃないけれど、それは人
間の業だ。
魔界は完全に封じられた。少なくとも子供たちの代までは心配ない。
そしてその先は、もう分からない。たった30年の物語だったけれど、僕には十
分すぎる長さだ。永遠なんて、とても考えられない。ただ、いざとなればまた、
勇者は現れる。
オジロンがグランバニアで待ってくれている。もう帰らなくてはならない。けれ
ども、あともう少しだけ、平和な世界を回ってみたいと思っているし、ビアンカ
や子供たちは、封印の洞窟というのに行ってみたいと言っている。
もうそろそろ子供たちに日記を与えてみようか。それとも僕たち二人にこそ、新
しい日記が必要になるだろうか?
八月一日、天空城にて