Melodies of life
プロローグ
思い
出会えたのは単なるの偶然だったのだろうか?
それとも決め付けられていた運命だったのだろうか?
それは今となってはどうでもいい事でしょう
透き通る青空を見上げて
あの記憶を思い出した途端にふと思ったのです
あなたはきっと知らないでしょう
私がどれだけの物を、
どれだけ生きる事の大切さを知らされたかなんて…
あの時からきっと私は…
決めていたのかもしれない
決意を――…
これは、それから三ヶ月後の物語――…
ストーリ1 小鳥が空に飛ぶ頃
タタタッタタッタッ…
静かな大きな庭の中で足音が響く。
湖の近くにきれいな白いドレスを着た一人の少女が走って来た。
銀色の髪飾りは太陽の反射を受けて輝く。
「彼、まだなのかしら。」
周りを見渡し、少し残念そうな声で呟く。
やがては青空を見上げ、自然を感じるように瞳を閉じた。
「そう言えば、ここに来るのは久しぶりだわ。」
涼しい風が吹き、少女の長い黒髪を揺らす。
この場所はいつ来ても心地良い。
疲れた心を癒してくれる。
(深呼吸っと…)
「溢れる♪その涙を♪輝く勇気にかえて♪」
気持ちよさの余りに少女は歌いだした。
少女の歌声はとても素敵だった。
小鳥達が透明感ある優雅な音色につられて空から一匹一匹とやって来る。
少女は白い手を出し、小鳥達をのせる。
歌っている時の少女の顔は何よりも美しかった。
誰かを思っていたのだろうか。
その時―――
「わ、わ、悪りぃ!」
ものすごい息切れている少年の声後ろから響いた。
突然の声で小鳥達は驚き、空へと羽ばたいて行った。
幾つかの白い羽が少女の前によぎる。
少女はそっと後ろに振り向いた。
「よう!待たせたな、ダガー。じゃなくて、女王様。」
そこに立っていたのは金髪で、尻尾を持っている少年であった。
そう、彼女の最愛の人――――
「ジタン!」
* * *
ジタンはこうやって時々アレクサンドリアに来て、ダガーに会いに来る。
二人はそこら辺の石段に座り、久しぶりの会話を交わしていた。
「あの歌…歌詞もわかったんだな。
今度オレにも教えてくれよ。」
あまりにも久しぶりの会話なので、ジタンが少し照れくさそうに言う。
「いいわよ、教えても。歌詞はあの後エーコに教えてもらったの。」
そう、さっきダガーが歌っていたのはマダイン・サリの歌で彼女の最愛の歌。
「この歌を歌うたびに思い出すの、旅の事とか、みんなの事とか…」
少し暗い表情をして彼女が言う。
きっとまた旅にでたいのだろう、ジタンはすぐにそれを見抜いた。
でも彼女はこの国を治めるという重大な任務を背負っている。
この国を離れるわけには行かない、それは彼女が一番わかっていることだ。
「なぁ、ダガー!来月のおっさんとベアトリクスの結婚式でタンタラスが芝居をやる事になったのは知ってるよな?」
突然思い出したようにジタンが少し興奮して尋ねてみる。
おっさんとは無論スタイナーの事である。
話しのとおり、彼らは来月結婚する事になった。
「え、ええ、知ってるけど…?」
いまいち意味がつかめないダガーはそれが彼女の表情に出ていた。
やがて、ジタンは口を開く。
「どうだ?やってみないか、『君の小鳥になりたい』のヒロイン。
皆がぜひダガーにヒロインやって欲しいってよ。
きっと、おっさん達も感動するぜ!
あっと、ちなみにマーカス役はオレね。」
気合が入り、ジタンが立ち上がった。
尻尾もさりげなく動いている。
「や…やりたいわ!やらせて!」
とてもうれしそうな顔をして即答した。
無理もない、彼女は昔から芝居に興味を持ち、憧れていたのだから。
唯一回芝居をしたのはジタンと初めて会った時の少しだけ。
今思い返せば遠いようで、近いような記憶。
「それでさ、テーマソングはそれにしたいんだ。いいだろ?」
彼は微笑みながら言った。
「え?」
きょんとした顔で彼を見る。
「俺達の歌。」
突然ジタンは彼女の前でかがみ、片膝を立てた。
ダガーはそんな彼の行動に一瞬驚く。
「今、俺のために歌ってくださいませんでしょうか?」
少しふざけ気味に言った。
だがある意味は最大の敬意を込めて言ったのだろう。
「はい。」
とてもとびっきりな笑顔。
愛しい人にしかみせないそんな笑顔――
優しい風が吹く、またあなたとあの舞台に立てる。
To be continue…