【第1話】
孤児院での生活
足が・・・・痛ぇ・・・
しかし泣き言を言うわけにはいかなかった。
「泥棒!!!!」
追ってくる大人を振り払って俺達は夜道を全力で走った。ぼろぼろの靴に石が刺さり足の裏からは血が出ていた。しかし俺は止まるわけには行かなかった。
・・・・・・・・今思うと俺は生まれながらの盗人だったのかもしれない。
俺は両親のことを覚えていない。物心がついた頃から一人だった。
両親を失ったのか、それとも俺は捨てられたのか
それさえもわからなかった。また俺は自分の名前も覚えていなかった。
しかし孤児院の仲間達に俺は「ルーニ」と呼ばれていた。
俺は孤児が集まる施設で暮らしていた。そして6歳の頃まで俺はその孤児院で生活をした。
その孤児院の生活はひどいものだった。
戦乱の世の中、行く宛もない子供達を食べさせるだけでもどれだけ大変なことか今思えばわかるような気がするが汚いベット、まずい飯、死んだ目をした孤児院のしつけ係、そして食べるためには孤児院で与えられる内職をしなければいけなかった。それは孤児院という名前の働き場だった。
6歳だった俺は孤児院の生活のすべてが・・・・・イヤだった。
生まれながらにしてそこにいた俺やその他の子供達は生きるためにそこで暮らして生きていくしかなかった。
身を寄せ合って俺達子供は生きていった。孤児院で支給される食料だけでは、育ち盛りの俺たちの胃袋を満たすこともできず盗みもやった。
毎日、生きていくためだけに日にちが過ぎていった。
ある夜、俺のベットの横で寝ていた俺と同じ境遇の孤児リュックが話しかけてきた。
「ねぇ・・・ルーニ・・・・起きてる?」
「あぁ、起きてる。空腹で寝られねぇ」
「ボクもだよ・・・・」
リュックがため息をついていった。
「ボクたち・・・・・・いつまでここにいるんだろう」
「さあな」
俺はリュックに投げやりに答えた。
そんなことを考えても仕方ない。孤児院でいる間はつらくても生きていける一日一日、飯をもらうために、働くしかない、それしか俺は考えなかった。
俺とリュックは何もかも性格が反対だった。リュックが好奇心旺盛なのに関して俺は何事も無関心、リュックは何か考え込むことが好きなのに対し俺は考えることが嫌い、体格もなよなよしたリュックに対して俺は体だけは大きかった。
しかしそんな反対の俺達はなにかとウマがあった。
「ねぇ、ルーニ」
リュックは小声でまた尋ねてきた。
「ん?」
「ルーニはしたいこととかないの?」
「したいことぉ?」
こいつはいったい、何を聞いて来るんだ。つい大声で言ってしまった。
「静かにしろよ」
周りの連中から注意された。
「すまねぇ・・・」
とりあえずみんなに詫びた後、
「急に変なこと言うなよ」
と小声で言い返した。
「だって、こんな生活、もうイヤだもん・・・」
リュックは元気なさそうに答える。
「だったら、ここから逃げ出すか?」
「そうしたら、ご飯食べられないよ」
「それがイヤだったら、そんなこと考えるな」
「う、うん・・・・」
俺はもう一回汚い毛布をかぶり、再度目を閉じた。
後ろでリュックもごそごそと毛布をかける音がする。
ふぅ・・・・
第2話 城への憧れ
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