【第104話】
火炎ムカデ
砂漠での行動は大変だった。
魔物と戦うために重装備をしてきたが予想していた以上に体力を奪われる。
それにしても、回りは砂漠でどこも似た景色。目印になるものは何もなく太陽の位置から、方角をある程度割り出していたがもう一つ強力な仲間がいた。
空を見ると、鳥が飛んでいる。親方が手なずけている隼だ。
主に臨時の手紙の運搬などを行うときに親方は隼を使って、やりとりをしていたが隼にイシスの場所を覚えさせ、定期的によんで、方向確認を行っているのだ。
一人で向かったら、こりゃ迷うな・・・・
親方とゼネテスは事前にイシスに偵察に行ったわけだが旅慣れた者でも砂漠横断はつらいと思う。
ひとたび間違い、水が切れたりしたら、この灼熱の太陽の中でのたれ死ぬだろう。
それにこの暑さでは精神力や集中力が持たない。意識が少し朦朧としてきたので、水筒の水を口に含んだ。水は生暖かったが、意識は次第にはっきりしていく。
「何か来るぞ!
気をつけろ!!!」
突然、先頭を歩いていた親方が声をあげた。眠っているところを突然たたき起こされた気分だが親おかげで一気に意識が研ぎすまされた。 緊張した面持ちで、辺りを見た。・・・特に・・・気配はない気がする。
だが、俺より親方のほうが危険を察知する能力は高いだろう。俺は集中力を切らさず、いつでも対応できるよう、剣を抜いた。
しばらくすると、前方から、砂が何本かもこもこと盛り上がりながら、こちらに向かってきた。
「魔物じゃ!散開しろ!」
親方の掛け声に反応して、同時に皆その場から離れる。
前進してくる砂の盛り上がりは三本。魔物は三体ということか。
砂から突然魔物が飛び出してきた。
「でけぇ!」
仲間が声をあげた。たしかにでかい。俺の三倍近くあるだろう。
魔物は赤いうろこに囲まれ、何本もの足をわさわささせていた。まるでムカデのようだった。
砂から現れたムカデに素早く攻撃を加えているものがいた。ゼネテスだ。ゼネテスが自分の二倍以上ある魔物の懐に入り込み、大剣を振りかざしていた。魔物の数本の足が切断され、悲鳴をあげる。早い。
「敵に攻撃の隙を与えるな。
我々盗賊は素早さを武器にする、
戦いは常に先手必勝じゃ」
親方が以前俺達に盗賊の戦い方を教えてもらったことが呼び起こされた。俺もゼネテスに加勢する。
魔物がゼネテスに気をとられいる間に俺は横から魔物に切りつけた。
剣で魔物の脇を切り裂くと、緑色の液体が噴出した。うろこは思ったよりも柔らかく、俺の剣でも傷をおわせることができた。今度は魔物が俺に気をそらした瞬間、ゼネテスが剣で串刺しにする。
「やったか!?」
俺が声をあげた瞬間、ムカデは口をあけ、俺とゼネテスに炎に息をはいてきた、
「ウワァア!!!」
「クソオォ!!!」
俺達は直撃を受け、地面をのたうちまわる。炎を吐く魔物なんて初めてだ。幸い、強力な炎ではなかったので、すぐに火は消えたが、体制を崩した俺達に瀕死の魔物が迫ってきた。
しまった!
そのとき、俺とゼネテスの間を白い影が魔物に向かっていた。
親方だ。そして、持っている剣で胴体を凪ぎ払うとまっぷたつに胴体が分かれた。辺りに体液が飛び散り、乾燥した砂に吸い込まれる。
すげぇ。まるで紙を切るような切れ味だ。あれが雷神の剣か。
残り二体を見ようとすると、一体はやはり胴体からまっぷたつにされていた。
これも親方がやったようだ。一匹は俺達が魔物を瀕死の状態にしたとはいえ、親方はあっという間に二体の巨大ムカデをしとめていた。
残り一体は残った仲間が少しずつ攻撃をあたえ、弱らせていた。
特に怪我人も出ていることもなく、魔物が力尽きるには時間の問題と思われた。
「ウワァア!!!」
突然、仲間の一人が砂漠に引きずりこまれた。
「もう一体いたか!」
第105話 一人目の犠牲者
前ページ:第103話 「砂漠の武装」に戻ります
目次に戻ります
ドラゴンクエスト 小説 パステル・ミディリンのTopに戻ります