【第111話】
襲撃
宿舎に案内された俺たちは今後の戦略を考えるために情報集めをしようとした。
しかし親方はロマリアの兵の援護はあまり期待しないほうがよい、と言っている。同じ人なのに自国だから助ける、他国だから助けない、なんだかおかしい気がするのは俺だけだろうか。
「国という組織に縛られると、どうしても自国優先となってしまう。
ワシはそれが嫌でサマンオサを離れた。
そして今回イシスに来たのも、一個人として
ワシは人を救いたいと思ったからじゃ。
おまえの考えは人間としてごくあたりまえの考えじゃ。
だが、そういう考えをできるものは実際は限られる。
その気持ちを忘れるでないぞ」
「あぁ・・・」
親方が真剣に俺に話したので俺も真面目にうなずいた。
「人間の誇りの問題でもあると思うぜ」
ずっと黙っていたゼネテスが話に入ってきた。話を聞いていたのだろう。
「俺たちゃ、盗賊だ。
とても世間様に顔向けできる職業じゃねぇ。
だが人としての誇りはある、
自分の誇りを持ちつづけることで、
精神的に何かくじけそうなことが起きたとき
誇りを持つことで乗り越える力にもなる」
ゼネテスの言うことも理解できる気はする。誇りを持っている人間は強い。
俺には誇りがあるだろうか?わからなかった。
「襲撃だ!!!!」
突然、宿舎に声が響いてきた。
「魔物が攻めてきたぞ!」
宿舎が慌ただしくなる。
「情報を集める前に、魔物があらわれたか。
仕方ない。ワシらもいくぞ」
俺たちは城門をくぐり、街の入り口にきた。北の方角から、遠くで砂煙をあげながら、魔物らしき大群が近づいてきた。
「結構な量だな・・・」
ざっとみたところ、敵の数は百以上。
「あれと戦うのかよ・・・」
仲間の一人がおびえたように言った。
普通の魔物では、あれほどの群れを作ることもないしイシスの街にまっすぐ近づいてくることから、バラモスかバラモスの配下に操られていることは明白だった。
イシスの兵士達は武器をかまえ、隊列を作る。
ロマリアの兵士達よりも慣れたものだった。平和だった時代が続いていたので、実戦も闘技大会以外はなく、中には魔物と戦ったこともない若者も多くいただろう。
イシス兵は前の戦いを経験しているというのもあるだろうし、前回の戦を生き残った者達なので、戦い慣れている感があった。
「これは頼りになりそうだな・・・」
俺がつぶやく。
「どうかな」
親方が俺の言葉に反応する。
「戦い慣れしてそうだぜ」
俺が反論をする。
「確かに慌てないですぐに対応できるのは
前回の経験と事前の打ち合わせがあったからだろう。
だが、疲れが残っておる。
もともと少ない生き残りの兵士で
迎撃しようとするのだから仕方ないかもしれないが。
それに街を守るために正面から戦えば、当然犠牲者も多く出るだろう」
「じゃぁ、どうするんだ」
「正面は兵士達に任せ我々は左手にまわって横から叩くぞ」
第112話 戦場(執筆完了)
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