【第112話】

戦場


イシスとロマリアの国民、どちらも一つの命に変わりがないと思うが

国王は自国を優先するから、援軍はあまり期待するなと親方は言う。


突然魔物の群れが襲撃してきたと話があった。

俺たちは左手から魔物を叩くことにした。




兵士達が魔物に突進して、魔物の群れを崩そうとする。


どうやら、一隊、二隊、三隊と分けて防衛するようだ。

今、一隊目が魔物と正面衝突している。

魔物の中には以前見た炎を吐くムカデや包帯人間がいた。


イシスの兵士達が果敢に攻撃をする。

兵士の持つ槍の一本がオオムカデにささる。


”グワオォ!!!”


苦しむムカデが火を兵士達に吐いた。

焼かれる兵士達は炎にまかれ、苦しむ。

すると別のムカデが横から兵士達を襲い、一人の兵士を頭から丸飲みにする。

鎧や兜をつけていたとしても、丸飲みされれば助からないだろう。


残りの兵士達は果敢にムカデに槍をさす。


また別のムカデが来る。

戦いはすさまじかった。


イシスの兵は健闘をし、何匹も魔物をしとめた。

しかし、それ以上に犠牲が多く、ほぼ食われ、一隊目が全滅してしまった。

魔物達の突進は止まらない。


「このままの勢いでは二隊目も抜かれるぞ!」


ゼネテスが悔しそうに怒鳴る。


「もう少し待つんじゃ」


俺たちはすぐにでも魔物に突入できる位置まで来たが

親方が制した。


魔物達は街に進行しつづける。

二隊目が魔物の群れと激突する瞬間、


「横から崩すぞ!」


親方の号令と共に、俺たちは突進した。


親方が雷神の剣を抜きさり、ムカデを一刀両断する。

魔物達は正面の兵士達に気をとられていたせいか

俺たちの攻撃にすぐに対応できずにいた。


兵士が槍でムカデを牽制している横から

ゼネテスや俺剣を振るい、体制を崩す。

弱った魔物に兵士達が次々と槍をさし、とどめをさす。


俺のように戦士が持つような剣を持たない盗賊の仲間達は

ショートソードで魔物を牽制し、兵士達と連携して

魔物をしとめていった。


「恐怖に負けるな!

 街を守れ!

 自分達の家族を守るんじゃ!」


親方の声が戦場に響き渡った。

声は自然と皆に勇気を与え、兵士達の動きがよくなる。

さすが元騎士団長だ。

兵士達の使い方を熟知している。


おかげで、二隊目は抜かれずに百以上の魔物を全滅させることができた。


ただ、犠牲も出た。

二隊目の三分の一は命を落とし、俺たちの仲間も三人、帰らぬ人となった。


昨日まで話していた仲間が翌日には骸になる、これが戦場なのか。

俺は荒い息をしながら、そう思った。


俺たちが街に帰還しようとすると、兵士の一人が叫ぶ。


「新手が来たぞ!」


遠くにまた魔物の群れが見える。


くそ、まだ終わりじゃないのか!


第113話 地獄のハサミ

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