【第128話】
死者の霊
エビルマージとマミーの群れを掃討した俺達は
死者に黙祷を捧げ、イシスに戻ることにした。そのとき、絶命したエビルマージの声が聞こえてきた。
「貴様・・・まだ生きておったか・・・」
エビルマージは既に胴が切り離されている。普通の人間であれば生きていることは考えられなかった。
”タダでは死なんぞ・・・タダでは死なんぞ・・・”
エビルマージは言葉を繰り返した。エビルマージには俺達の声が聞こえているかどうか怪しかった。
”おまえたちも道ずれにしてやろう。
このピラミッドで永遠にさまよい続けるがよい!”
エビルマージの体が怪しく光ると、その光が俺達に伸びてきた。かわす暇もなく全員がその光を浴びる。
次の瞬間、俺達は見覚えのない場所に飛ばされていた。
「ここは・・・」
ゼネテスが辺りを見る。
辺りの壁の作りが変わらないことからどうやら、まだピラミッドの中にいるようだ。
俺は腕を伸ばしたりしてみた。特に変なことはない。とりあえず、エビルマージが発した光を浴びたからといって体に異常はなさそうだ。攻撃魔法の類ではなく、ただ俺達をどこかの場所へ移動させただけなのか。
「用心せい・・・」
親方が前方の床を見ながら低い声を発する。俺も視線を床に落とした。
大量の人骨がある。
過去に王族が死んだときに埋められた遺体なのか、それとも遺跡あらしなのか、エビルマージに殺された奴らなのか。
どちらにしろ、わざわざ死に際にここへ連れてこらえたということはろくな場所ではない。
それにこの場所にいるとなんだか息苦しい。ほこりっぽいのか、それとも空気が薄いのか。
俺達はしばらく辺りを警戒したが、特に何も起きなかった。
「なんだ・・・何もおきねぇじゃねぇか。
俺達を飛ばす場所を間違えたか?」
ゼネテスが冗談ととれる発言をする。
「わからんが・・・とりあえず、この場所から脱出せんとな。
どんな罠がしかけられているかわからんから、
今までと同様、罠を警戒しよう」
左右に道が広がっており、親方は左の道を調べるため親方は剣を抜き、床をさしはじめた。落とし穴を警戒するためだ。
人数も少ないので全員で剣を抜き、警戒をしようと思ったが 仲間の一人が、剣を抜かずぼーっとしている。
「おい、どうした?」
俺が話しかける。
そいつは何にも答えない。まるで何かにとりつかれたかのように、無表情だった。
すると、突然そいつが歩き出す。右の道へ、ゆっくり。
「王家の宝がある」
一言つぶやく。みんなで顔を見合わせる。
どういうことだ。ここに何故王家の宝があることを知っている?
「おい、罠があるかもしれないんだぞ。軽率に行動するな!」
俺は言ってやったが、無視されどんどん右の通路に進んでいく。
「何かにとりつかれたのか・・・」
俺がゼネテスを見る。
「その可能性はあるな」
ゼネテスも神妙な声を顔をする。
「エビルマージが”このピラミッドで永遠にさまよい続けるがよい!”
って言っていたものな。
もしかしたらここには大量の死者の霊がいるのかもしれない」
”霊”という存在は実際にいるかどうかはさだかではないが魔法を使うとき、精霊の力を借りたりすることから死者の霊がいるとしても別におかしいことではないと思う。
「親方、どうする?」
もう既に奴はもうすぐ見えないところまで先に行っている。
「放っておくわけにもいかんだろう。
後を追うぞ」
第129話 黄金の爪
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