【第129話】

黄金の爪


エビルマージが最後の力を使い、俺達を見知らぬ場所へ飛ばした。

人骨が大量にあり、息苦しい。


そして仲間の一人がまるで何かにとりつかれたように

道を先に進む。

放っておくわけにもいかないので後を追うことにした。




長い年月がたっているのか、床は砂とほこりにさらされていたため、

仲間が歩いた足跡がはっきりとわかった。


足跡は少なくとも安全が保証されているので

かけあしで歩き、すぐに追いかける。


仲間は一番奥で立ち止まっていた。


そこは小さな高台が設けられ、大きな棺があった。


「たいそう立派な墓だな」


ゼネテスが上を見上げた。


「これが王家の墓か」


俺も棺を見た。


「あの中に王の墓と宝が眠っているのかな」


「そうかもしれないな」


俺達は棺を見つづけた。

なんだか、不思議な気分になってくる。

棺の中を見たい。

王家の宝を見てみたい。


そう、危険なことはわかっている。

わざわざエビルマージがこの場所に連れてきた、

そして取り付かれたようにここに導いてきた仲間。

危険だ。

心の中でそう叫んだ。

しかし、どうしても俺は王家の宝が見てみたかった。


まるで・・・俺自信も取り付かれたように。


ゼネテスや親方も見ると同様だ。

あのトールまで物欲しそうに、棺を見上げる。


「あけてみるか」


親方がそう言った。


いつもの親方だったらこの場を脱出することを考えるだろう。

信じられない判断だが、反対するものはいなかった。


どうしてもみたいという好奇心からなのか、

人間の欲求なのか、それとも俺達は・・・全員何かにとりつかれたのか。


親方が棺に高台にのぼる。

そして棺を徐々に動かそうとしたが、重くて親方一人では動かすことができなかった。


「手伝ってくれ」


苛立ったように親方が言う。


既に親方は冷静さを失っている気がした。

しかし今の俺達にはどうでもよいことに思え、

棺をあけることしか頭になかった。


ゼネテスや俺など力のあるものが棺に近づき動かす。


「重い・・・」


俺達はゆっくりと棺を動かした。

徐々に棺を動く。


・・・開いた。


棺の開くと、中から一瞬生暖かい空気を感じた。

気のせいだろうか。


・・・そんなことはどうでもよい。

俺は棺の中を見た。


中には一体のミイラと黄金に輝く見事な武器のようなものがしまわれていた。


「おぉ・・・・これはすごい・・・」


親方やゼネテスが感嘆する。

獣の爪をかたどった武器のようだ。


これがすべて黄金だとするとかなりの金額だろう。

金貨でいえば、何百枚作れるのだろうか。


一財産作れるほど、黄金に輝く爪は美しかった。


皆その爪に見とれた。


第130話 怪しい影

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