【第18話】
進入
俺とリュックはロマリアの城に忍びこんだ。
正門は見張りの警備が厳しいため、城壁をよじ登り二階から進入した。
二階にいくと、数枚の窓があった。窓は壁にはめ込まれているタイプのもので開閉はできず、また不透明だったところから、城の中の様子を見ることができなかったが俺は、そのうちの一枚の近くに立つと、窓に耳を近づけ、聞き耳をたてた。・・・・・どうやら、近くには誰もいないようだ。
俺はリュックと目をあわせ、うなずくと闇市で買った盗賊の七つ道具を出して、窓に穴があけた。さすが、盗賊が使う専用品だけあってすばらしい品だ。ガラスを切っているのに、音がしない。俺は窓をくりぬく作業をしはじめた。
同時にリュックは俺がくりぬいている部分に粘着性のある植物油脂を塗りそこに布をあて、くっつけた。しばらくすると、人一人くらい通れる穴をあけた。接着剤の役割を果たしている植物油脂は強力でその布をひっぱると手前ガラスを引きぬけるという方法だ。
こうしないとガラスをくりぬいても、押しだすしかなく押しだされたガラスは落ち、割れてしまう。そんなことになったら気がつかれるのは目に見えているからな。俺とリュックが考えて編み出した技法の1つだ。
くりぬいた窓ガラスを静かに床に置いた。
「リュック、いくぞ・・・」
「うん」
城の中に忍び込んだ俺たちは、辺りを警戒しながらすばやく移動した。俺もリュックも場内の地図を頭の中に叩き込んでいるのでどこに何があるかはわかっていた。問題は、城の中に見張りがいるが、さすがに地図にそこまでの記述はないので、そこはうまくやり過ごすしかない。
俺もリュックも、孤児院暮らし時に盗みをやっていたことから夜目は利くほうだ。通路のかすかな明かりがあれば、目的地に行くのはたやすかった。
通路には運良く見張りはおらず、俺たちは難なく宝物庫がある塔についた。たぶん、王の間や、主要の扉のところに兵士達は見張りをしているのかもしれない。塔への階段があったが、扉があるわけでもなく上に続く階段が見える。
「拍子抜けだな」
「まぁね」
もっと厳重な警備をしているのかと思ったが、城の中に入ったら、警備兵が一人もいない状態である。
「まぁ、俺たちにとってはこの方が仕事がやりやすいがな」
「この調子だったら、消え去り草とか買う必要もなかったかもね」
俺たちは、塔の階段を上がっていった。
第19話 宝物庫
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