【第21話】
突然の声
宝物庫に入った俺とリュックは、金の冠を手にいれることができた。
リュックは、やっぱり辞めようと言いだしたがここまで来たら、引き返すわけにいかない。俺とリュックは金の冠を持ちだして、宝物庫を出た。
ロマリア城を出た俺たちはそのまま、ロマリアの街も出る。夜、出歩くのは魔物が凶暴化してまたこっちも見通しの悪いところで戦わなければいけないので危険ではあるが、それでも城の兵士に捕まるよりはマシである。
俺たちは夜の旅を決行した。目的地はカサーブを東にいったところに海につながる川がある。そこで雇い主と落ち合うことになっている。きっと船を用意していることだろう。
雇い主は別大陸の商人のため、もし金の冠を渡したらそこで大金をもらうことになっている。その場で便乗して、船に乗せてもらい、別大陸に行くという手も考えている。
魔物は執拗に襲ってきた。アルミラージ、魔法使い、キャタピラー、軍隊蟹、こうもり男などイヤというほど襲ってきた。だが俺達はすべてそいつらを退けた。
カサーブを歩くまでにだんだんと日が明けてきた。日があけてくれば魔物達の数は少なくなるし、戦いも楽になる。
「少し休むか」
「うん、そうだね」
ロマリアも今頃は騒がしくなっているに違いない。だがここまで離れていれば、しばらくは大丈夫だろう。一休みしてからカサーブにいって、そこで準備を整えたら東に行こう。
「ほら」
俺はリュックにパンの棒を渡した。
「ありがと」
リュックはそれを受け取り、ちぎりながらほおばった。味気ない食事である。言葉少なげに、俺とリュックは簡素な朝食を食べた。
「すまないな」
俺はポツリとつぶやいた。
「何が?」
「こんなことにつき合わせて」
「またそんなこと言って。いいって。
そりゃ・・・盗みはやっぱり良くないと思うけれど、
ボクはルーニがいなかったら今生きていたかもわからないし」
そう言ってリュックは一度言葉を切る。そのあと俺の顔を見ると
「それに今回がこの仕事最後でしょ?
今度は冒険しようよ。
それこそお宝でも探してさ。
ルーニとボクで二人で世界を回ろう」
リュックはそういうと笑顔をかえした。
「あぁ・・・・そうだな」
最初は、こいつは俺が頼りだった。しかし今は逆だ。俺がこいつを頼りにしている。時がたてば変わるもんだ。俺はリュックを頼もしげに見た。
「一休みしたら、カサーブにいって
そのあと東の小港にいってお宝を渡して、新たな冒険だ!」
俺は自分に活を入れるため元気よく声をあげた。
「ほぉ・・・カサーブの東だったのか」
そのとき、突然声がした。
「だ、誰だ!?」
第22話 一人の老人
前ページ:第20話 「金の冠」に戻ります
目次に戻ります
ドラゴンクエスト 小説 パステル・ミディリンのTopに戻ります