【第20話】
金の冠
宝物庫がある塔を登り、眠り草で見張りを眠らせた。
鍵がかかった扉があったが、闇市でリュックが購入した盗賊の七つ道具で鍵をあけることができた。後は、お宝を頂くだけだ。
俺は目の前の布をそっと取ると、中からきらびやかな冠がでてきた。
「狙い通りだな」
まさしく金の冠だった。金の冠はまばゆい光を発していた。
「すごい冠だね・・・・・・」
リュックも目を丸くしている。
「本当に・・・・・これ盗むの?」
さすがのリュックも、目の前の冠をみてためらった。
「当たり前じゃないか」
「でも・・・・・・国宝だよ?」
「わ、わかってる」
「声震えているじゃない」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・やっぱり、やめない?
今なら間に合うよ」
「バカ、ここまで来てひけるか。
第一、もらった前金はどうなる。
手ぶらで帰ったら、それこそどうなるかわからねぇ」
「まぁ・・・・そうだけれど」
「それよりグズグズしている暇はないぜ。
眠り草の効果もそんなに長くは続かないはずだ。
さっさと頂くもの頂いて逃げるぞ」
俺はそういうと、布ごとお宝を包んで荷物袋の中にしまった。あとは逃げるだけだ。まだ城で騒ぎが聞こえないところを見ると、城の中に入ってきた窓ガラスをあけたことも気がつかれてないと思う。俺たちの盗みの手際が良かったといえばそれまでだが、しかし結構ずさんな城だ。ロマリアと言えば、名門の城じゃなかったのか。もう少し警備が厳しいと思った。まぁ、俺としては約束のブツさえ手に入れば、金がもらえるのだからかまわないが、少々拍子抜けだった。
扉を出るとまだ見張りは寝ていた。気がついたとき、騒ぎになるだろう。当然追っても差し向けられるはずだ。
一刻も俺達はロマリアから離れないといけない。俺たちはドアを閉め、塔の階段を降り、入ってきた窓から出て、ロープをつたり、ロマリア城を後にした。
第21話 突然の声
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