【第30話】
行方知れず
俺とリュックは、ロマリアの見習い兵だ。
3年前、俺とリュックはある商人の依頼でロマリアの国宝を盗もうとしたが失敗して捕まった。本来であれば、罪悪人としてそれに相応する罰を受けなければならなかったが俺達を捕まえた老人の計らいで、ロマリアで働くのであれば、釈放するとの話がきたのだ。
誰かに束縛されるというのは俺はイヤだった。だが捕まった身として、そうとも言っていられない現状とリュックが宮廷魔術師になるのが夢だというその2つからロマリアで働くことを俺は了承した。
最初はそのうち逃げ出せばいいと思ったがロマリアでの生活はそうそう悪いものでなかった。飯は三食ちゃんと出るし、ロマリアは豊かな国でノアニールも自然豊ではあったが、ロマリアは物資やその他食料等も十分あり他国とも交流があり、賑やかで過ごしやすかった。
それにリュックには散々迷惑をかけたのでリュックがロマリアに楽しそうに魔法を勉強しているのを見ると、ここを出ようとはいえなかった。
ロマリアの図書館には魔法の文献があり、リュックは暇さえあれば熱心にそれを見ていた。俺は魔法には興味なかったが、兵士としての雑役をこなし剣術や筋力を磨き、日々を過ごした。もっとも正式な兵士としてではなく兵士見習ということで雑用がほとんどだったが。仲間の兵士はみんな年上だったが、年を気にせず気さくにしてくれた。また、俺の武術は自己流だったが、正式なロマリアの剣術を学べたのも良かった。最初は、型にはまった剣術はキライだったがロマリアの剣術は非常に洗練され、実戦に役立つものが多く、学ぶものも多かった。
しかし、1つ気になったことはあった。カンダタという老人のことだ。
この3年間、俺達を捕まえたあのじいさんを一度も見たことがないのだ。牢獄では話しかけたときは、あのじいさんの下でいつか働くということを聞かされたが実際に俺達が配属されたのは、まったく知らない兵士の下に配属された。
仲間の兵士達にじいさんのことを聞いたのだがカンダタという人間は知らないとのことだ。何故だ?
奴はロマリアの人間ではないのか?最初は、兵士達がみんなでグルになって俺を騙していると思ったのだが、どうやら、本当にロマリアの兵士達はじいさんのことを知らないようだった。俺はてっきり、じいさんがロマリアの騎士だと思っていた。
じいさんは、王に頼んで俺達を釈放をしてくれたと言っていた。王にそのことを確認したかったが、大勢の兵士がいるこのロマリアに一介の兵士見習いが王に面会できるわけではない。そのため俺はロマリアにはいたが、3年間、王との面会が許されず顔も知らなかった。
しかし兵士見習いの俺にも王に面会できるチャンスがやってきた。ロマリアでは1年に一回腕を競い合う闘技大会が開かれるのだ。参加資格は18歳以上。一昨年、去年は年齢が満たず参加できなかったが今年18になった俺は闘技大会に出られる資格がある。そこで勝ち残った上位20名は兵士から正式な近衛騎士として認められるとのことだった。俺の場合は見習い兵士だから、一気に近衛騎士になるのは社会言葉で言えば、大きな出世とでも言うのだろう。
近衛騎士ということはつまり王宮に直属で仕えるということなのだが、どうも、騎士のイメージというのはきらびやかな鎧に身を包み王に従属するというイメージが俺には強くこの言い方が嫌いだった。最も騎士も軍隊で士官の指揮の下につくという意味だから従属するという意味では同じだがな。
とにかく近衛騎士は王から剣が与えられる。そのときに面会できるはずだ。王に直接進言をしたとあのじいさんは言っていたのだから、王なら、あの老人のことを知っているだろう。
俺は正規兵とかそんなことに興味なかったしロマリアにもそれほど長居をするつもりはなかったが、俺をいとも簡単にまかしたあの老人をもう一度会ってみたかった。
そして、できれば戦ってみたい、俺はあれからかなりの修行をした。見習い兵ごときに俺を負かせる奴もおらず正規の兵士と訓練もしたことがあったが今では正規の兵でも負けないくらい腕っ節も強くなった。
今の俺はどのくらい強くなったのか、あの圧倒的な強さを持った老人ともう一度戦ってみたい、それがあるまでロマリアを離れられなかった。
第31話 闘技大会
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