【第31話】
闘技大会
一年に一回開かれる闘技大会。
王に面会できるチャンス、これを逃す手はない。俺はロマリアの城で開かれる闘技大会に出場することにした。
俺とリュックは控え室にいる。今回の闘技大会、リュックも出場する。リュックは闘技大会そのものには興味ないし争いそのものが好きでないので出たくはないのだろうが正式な宮廷魔術師になる一歩として、リュックも出場することになった。
「いよいよだね」
「あぁ」
まずは俺から出番が回ってきたのでリュックが話し掛けてきた。今年の兵士見習いの数は千人以上いる。国に所属することから安定した収入を得たいと考えるものや国への忠誠心など人によって考えは違うだろうがロマリアの男は、かなりの数が兵士になることを夢見ているようだ。他国からの志願兵もいる。元傭兵経験などを持つものは戦闘経験も豊富なので要注意である。
闘技大会はトーナメント方式で行われそのうち上位二十名に勝ち残るには、最低六回は勝ち残らないといけない。九回勝ち残れば、決勝に出場できる。ただし、一日に九連戦とは通常では考えられないハイペースな戦いなため決定戦に勝ち上がるには戦いの技術以外にスタミナや知力など総合的な力が求められる。
闘技大会以外で正規の兵に採用されることはあるが、この戦いで勝ち残れば否応にも注目されることは明らかであり王と面会ができるはずだ。
「じゃぁ、いってくるぜ」
「うん、がんばってね」
「おまえもな」
巨大な会場に何十人もの兵士見習い達が戦っている。その一角に立たされ、俺は対戦相手を見据える。相手はかなり緊張しているようだった。
試合開始とともに俺は一気に間合いをつめ剣を抜き放ち、相手の剣を叩き落とした。その喉元に練習用の剣を突き付ける。
「勝負あり!」
一瞬で勝負を決めた。
相手も俺と同じような年だったが、同じ兵士見習いには負ける気がしない。俺やリュックは、子供の頃から実戦で戦ってきた。城の中で稽古だけしか剣技を鍛えて過ごしてきた奴等とは違う。周りの兵士見習いや、騎士達が俺の勝負を見ていた。
「あいつが、優勝候補の一人のルーニか」
「あぁ、あんだけ図体でかいのになんて早いんだ」
俺の強さは兵士見習いの中でもずば抜けていたためロマリアの兵士見習いの中ではすでに名を知られていた。
その後リュックにも呼び出しがかかりリュックも順調に勝ち残っていた。闘技大会では魔法を使うことも許可されているがリュックは魔法を使わずともそこそこ剣技もできるようになっており兵士見習いには充分な腕前と見えた。
それに魔法を使えば、極度に魔力を消費するため序盤で全力を使わずとも勝ち残り、先への戦いまでスタミナを取っておくことを考えているのだろう。
魔法が使える人間が何百人、何千人に一人というほど少ない割合でまして兵士見習いに魔法を習得しているものがいるとは思えない。
問題があるとすれば、兵士見習いではなく他国から来た冒険者上がりの志願兵がこの戦いに出ているのであれば注意はしないといけない。
しかし魔法を使えば、リュックにかなうものはそういないだろう。戦士としての能力と魔法使いの能力を持つ魔法戦士の適性を持っているリュックの強さは兵士見習の中でも飛びぬけていた。
もし最後まで俺とリュックが勝ち残れば最後にやりあうことも考えられる。
「それはそれで面白いかもな・・・・」
俺はニヤリとした。
第32話 魔法戦士
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