【第32話】

魔法戦士


ロマリアで行われている闘技大会に

俺とリュックは順調に勝ち残っていった。

六戦勝ち残れば、上位二十位に入り、

正規兵として認められ、王との面会も叶うはずだ。

そのときに、俺を負かしたカンダタとか言うじいさんが

どこにいるのか聞いてみたい。

そして・・・奴と戦ってみたい。




「それまで!」


主審の掛け声とともに試合が終わる。

俺は六戦目で相手の剣を叩き伏せ、勝利を得た。


「ふぅ・・・・」


汗をぬぐう。

さすがに、ここに残っている連中は千人近くのうち

五十人に入っている連中ばかりなので、かなり強い。

兵士見習いからの志願者はほとんど脱落したのではないだろうか。


しかしここに残っている連中も六戦も

こなしてさすがに疲れているようだ。

俺は体力だけには自信があるし、体もでかいので

力でうち負けることはまずなかった。


二つとなりの会場を見るとリュックが剣を打ち合わせていた。

しかし相手の兵士志願者もなかなかの剣の使い手で

リュックを防戦一方に追いやった。


さすがに剣だけの戦いとなると

リュックの力ではここまでが限界かもしれない。


「リュック、がんばれ!

宮廷魔術師になるのが夢なんだろ!

なんとしても勝ち残れ!」


俺はリュックの試合会場にかけより、怒鳴った。

その声が聞こえたかわからないが、

リュックはバックステップで後ろに飛び

相手との距離をあけたあと左腕の盾を投げ捨て、

その手でメラの炎を投げつけた。


いきなりの魔法攻撃に驚き、相手は盾で防御をしようとしたが

間に合わず、炎が鎧に直撃する。


「ウワァア!!!」


相手はメラの攻撃で吹っ飛び、転げまわる。

鎧にあたったし、メラ程度なので体が燃えることはないが

相手の戦力を剥ぎ取るにはこれで充分だった。

立ち上がろうとした相手にリュックが剣を突き付ける。


「それまで!」


勝負あった。リュックの勝ちだ。

リュックも六回戦を勝ち残った。


周りの連中が今の戦いを見てざわめく。


「アイツ・・・魔法使ったぜ?」


「あぁ・・・魔法なんて初めてみたよ」


「なんで兵士見習いに魔法を使える奴が混じってるんだ?」


「そんなこと、オレが知るかよ?

魔法戦士なんじゃねえの?」


「アイツとだけは、当たりたくないな」


「違いねぇ」


アイツら、リュックのこと恐がってやがる。

身内が話題にあがるのは、なんとなく気味がいい。


リュックの魔法はイヤというほど俺は見ているし

ロマリアに来る前まで、何度となくリュックの魔法に助けられている。

城に来てからは魔法を使う姿をほとんど見なくなったが

リュックの魔法の強さは健在だった。

だが、あれでもリュックは相当手加減をして魔法を放ったはずだ。


「リュック、やったな。

宮廷魔術師も近いぜ」


俺は試合が終わったリュックに声をかけた。

リュックはこっちを見てニコリと笑った。


第33話 準決勝の勝利者

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