【第33話】
準決勝の勝利者
俺とリュックは順調に勝ち残り六回戦まで上ってきた。
上位二十位に入り、これで王との面会が叶うだろう。リュックの宮廷魔術師の希望も近いものになるかもしれない。
しかしここで手を抜くわけにはいかない。せっかくここまで来たのなら、決勝まで勝ち残ってやろうじゃないか。
「そこまで!」
「そこまで!」
俺とリュックの会場から同時に主審の声が上がった。俺の目の前で相手は地面に手をついている。一方、リュックの会場でもリュックと対戦した相手が尻もちをついていた。
闘技大会は終盤を迎え、勝ち残っていたものは四人人となっていた。準決勝である。
俺は力で相手をねじ伏せ、リュックは魔法を使って動きを封じ、共に勝利を得た。
「ついに決勝だぜ!」
「凄腕の二人が勝ち上がってきたな」
「今年の闘技大会はレベルが高いよ」
「しかも両方とも兵士見習いからの勝ち残りだよ」
周りの兵士や見習いで負けたもの達も興奮していた。
俺とリュックは幸運にも互いに対戦することがなく決勝まで当たらなかった。しかし次はリュックとの対戦。否応にも戦わなければならない。俺もリュックも九戦目が終わり肩で息をしていた。連続での戦いで筋肉もはっている。特に七戦、八戦、九戦は皆、勝ち残ってきたものだけあって強い奴等だった。
リュックの方も六戦以降、連続で魔法を唱えているので魔力も尽きかけているだろう。決勝は気力の勝負となる。
「やっぱり、おまえが勝ち残ってきたか」
俺はリュックに声をかけた。
「まさか決勝まで勝ち残れるとは思わなかったよ。
ルーニが決勝まで行くとは思っていたけれどね」
「なぁ、リュック」
「何?」
「俺は今、戦うことが楽しみだ。
今おまえとこれから戦うのも楽しみだ。
以前物を盗んで生活していたときは、それしか生活手段がなかったから盗みをした。
決して楽しんでいたわけじゃない。
しかしあの一件でカンダタに会い、自分より強い者を知り、悔しさと同時に自分を鍛える楽しさを知った。
今でもあのカンダタに会いたいという気持ちは変わらない。そして自分があの老人に近づけたのが知りたい。
カンダタに会いたいんだ。
王は手加減をしたら見破るだろう。
そのためには王に見せかけの勝利は見せられないし、俺はこの戦いを楽しみたい」
「・・・・・・真剣勝負するってことだよね」
「そういうことだ」
「覚悟しとくよ」
第34話 リュックとの戦い
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