【第48話】
再戦
俺は少し大きな広間に通された。
そこでじいさんとの戦いがようやく実現する。俺は剣を構えた。しかしじいさんは丸越しのようだ。それなのにどこからでもかかって来いという。この余裕は何だ?
前にじいさんと戦った時は、一瞬で間合いを詰められて終わった。ヤツの素早さが並ではないということはわかっている。例え素手だとしても、こちらの剣が当たらなければ、意味がないということか?
なめるな!俺だってあの時のままじゃねぇ!以前戦いに負けた屈辱感と激しい闘争心があふれだした。
俺はじいさんに突進する。するとヤツも俺の懐に飛びこんできた。
「二度も同じ手が通用するか!」
俺はじいさんが懐に飛びこむ前に剣を凪ぎ払った。鋭い金属音が鳴り響く。
じいさんはいつのまにか2本のショートソードを抜き放ちそのうちの一本で受けとめていた。そうだった、以前もヤツはいつのまにか俺の首筋にナイフを付きつけていた。武器を隠し持っているのだろう。少なくとも騎士のように正々堂々と戦う方法ではない。これが盗賊の戦い方なのだろう。
だが、ヤツの最初の一撃目は防げた。少しでもヤツに近づいたということか。
俺は力任せに剣を押してやった。力なら体格からして負けることはない。体勢を崩した瞬間、しとめる。
しかし、老人は力で押し返そうとした俺に逆らわず打ち合わせていたナイフを引いた。俺が勢い余って少し前乗りになる。そこを老人は横から右手に持つナイフで鋭い一撃を見舞ってきた。かろうじて盾で防ぐ。盾にかなりの衝撃が伝わってきた。そして、向かい合うじいさんの目は鋭く戦い前の温厚な顔とは似ても似つかず殺気を放っていた。
そして、息を付く暇を与えず、左手のナイフで二撃目を打ちこむ。すごい暫撃だ。こちらも不安定ながら、右手に持っていた剣で受けとめる。さらに三撃目、四撃目を打ちこまれ、なんとか受けとめていたが五撃目には体勢が完全に崩れ、俺の右手から剣が舞った。
第49話 戦いの技術
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