【第50話】

なぐさめ


カンダタとの差はまだ大きい。

まったく歯がたたなかった。

カンダタは戦いに必要な要素は

予測と相手への急所を叩きこむこと、

この二つだと言った。




ロマリアでの数年間の生活、闘技大会で優勝で

俺は有頂天になっていたが自分の世界が小さいことを知った。

上には上がいる。俺はがっくりうなだれた。


その様子を見たカンダタが声をかける。


「さっき、予測などは大切だといったが

 それだけがすべてではない。お主のような力も無論大事じゃ」


「俺をなぐさめているのか?」


「そんなところじゃ」


カンダタは悪気もなくさらりと言った。


「例えば、騎士のような分厚い鎧に身を包んだやつには

 今のワシのような戦い方ではなかなか致命傷はあたえられんじゃろう。

 そういう場合は、またはフェイントなど騎士が身に付けている剣術が有効じゃろう。

 あとは魔法じゃな。

 それに戦う相手は人間だけではない。

 硬い鱗につつまれた軍隊カニや、大物で言えばドラゴン…

 まぁ、今の世の中にはドラゴンなぞおらんが

 また別の戦い方が必要じゃ。そういうときに必要なのは力じゃ」


「つまり…何がいいたいんだ?」


「戦い方にはいろいろある。

 お主は何を目指したい?

 それによって戦いの極め方が違う。

 それを考えるんじゃな」


「…」


「ここにいれば、いろいろ教えてやろう」


「わかった。俺とあんたの実力の差ははっきりわかったし

 約束通り、あんたの部下になろう。

 だからいろいろ教えてくれ」


カンダタはそれを聞いてニヤリと笑った。




第三部終了です。

ルーニがロマリアの闘技大会で戦い、

その後、王の命をうけて老人カンダタと会うシーンを書いてみました。


親友ルーニとはここで別れることになります。

孤児院暮らしからずっと一緒にいた親友との別れ

これから二人は別々の道を歩んでいきます。

宮廷魔術師になる夢を子供のころから持っていたリュックは

親友との間柄を考え、一時は親友を選びますが

ルーニはリュックのことを考え、自分と別れるよう決断を促せました。


親友であるゆえに、友には悪いことはさせられない、

これが良いことか悪いことはわかりませんし

悪いことをそもそもしなきゃいいじゃんという声もあるかもしれませんが

ルーニは城のような規律の厳しい環境で従属されることを何より嫌い、

同じ従属でも、自分のしたいことができる環境を選んだことから

悪い道とは知りながらも、その道を選びます。


また老人カンダタがどのような人間であったのか、

全部は語ってないのですが

盗賊団の頭であり、ロマリア国との関係も第三部で書いて見ました。


この第三部ではまだ老人カンダタはルーニに隠し事をしています。

第42話「再会」でカンダタがルーニ達に語った

金の冠の雇い主の首領が人殺し、人身売買などの犯罪以外に何かを

しているということを暗に言っているシーンがあるのですが

老人カンダタやルーニは今後この事件に巻き込まれることになります。


その話は次の次、第五部で語られることになりますので

こんな話しがあったということを頭の片隅にでも覚えていただければ

後の内容もわかりやすくなります。


次の第四部はゲームDQ3やチェルト本編ででてきた”あること”に関わってくる話になります。

(執筆完了リストを見ると、ある程度予測がつくかも?)


第51話 心情の変化

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