【第51話】
心情の変化
リュックと別れて、俺がシャンパーニの塔に来てから二年の月日がたった。
その間にリュックとは一度も会わなかった。普通の兵士がシャンパーニの塔に訪れること自体が王国としては許されなかったのだ。リュックは既に王宮に使える身であり、ロマリアでの労役がある。もちろん休みもあるだろうし、そんな時にカサーブとかで会うこともできたのだろうが一瞬で相手に情報を伝えるにはこの時代にはなかったため俺達は会うことはなかった。その変わり、たまに手紙は出した。
直接シャンパーニの塔にリュックからの手紙は配送されなかったがノアニールの俺達が住んでいたところに手紙を出してもらいたまに俺がノアニールにいくときに手紙を見た。
リュックはがんばって魔法の修行をしているようで手紙からは生き生きとした様子が伝わってきた。
俺はシャンパーニの塔にいる盗賊カンダタの部下に約束通りなった。誰かに従属されるというのはキライだったが特に言葉に気を使うこともなく、部下といってもほとんど対等な立場だった。ただ、仕事をするときはカンダタが中心となり皆に役割を与え、それを実行しお金を稼ぐ。
新米の俺はシャンパーニの塔では一番年下だったが他の仲間ともすぐにうちとけ、困ることもなかった。
また仕事がないときは約束通り、カンダタは俺に戦い方を教えてくれたり世界の話しを聞かせてくれた。そして戦い方以外にさらに教えこまれたのが盗賊の技術である。
仕事柄、情報を売るようなことをすることから御密に行動をすることが求められ気配を消したり、足音をたてすに歩く方法や、盗賊の七つ道具の効果的な使い方、隠し扉の発見の仕方やトラップ解除などを徹底的に教えこまれた。
「仕事」のときは老人カンダタは厳しく、失敗は置かしたものにはそれなりの制裁が加えられた。組織としてかなり厳しいところだが、一人のミスにより仲間全員が危機に陥ることを考えれば、それも仕方ないだろう。
しかし仕事以外の時は俺のことを部下というより孫という感じで面倒を見てくれた。そして優しかった。
最初シャンパーニの塔に来た時はこの老人のつかみどころがないと思ったのだが二年間一緒に過ごすことでこの老人の性格がわかってきた。
俺は今までに感じなかった感情をこのじいさんに感じるようになってきたのだ。俺には親がいなかった。だから、物心ついたときから頼るものは自分自身のみ、もしくは親友のリュックだけという考えで生きていたがこの老人の優しさを感じるようになり、俺も自然にこのじいさんのことを慕うようにになっていた。不思議なものである。最初は俺のことを捕らえた張本人であり、いつかはこのじいさんの力を越えてやろうと躍起になっていたのに今は慕っているのだから。ここの生活はロマリア時代に過ごしていたときより俺にあっている気がした。
第52話 探索依頼
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