【第52話】
探索依頼
シャンパーニの塔で二年間の月日を過ごす。
老人カンダタは俺に優しかった。そして老人カンダタのカリスマは大きくたくさんの部下からも慕われていた。
ある日俺はカンダタに呼び出されたためシャンパーニの最上階に足を運んだ。そこにはカンダタが各地で集めた骨董品などが並べられていた。
「なんだ、親方?」
今はカンダタのことを親方と呼ぶようにしている。
「新たな仕事の依頼が来たので、おまえに頼もうと思ったのじゃ」
「どんな仕事だ?」
「依頼主はノアニールの村長、依頼内容は人の救出じゃ」
「ノアニールか…」
俺が子供時代ずっとリュックと住んでいた場所であり愛着があるところである。いわば俺の故郷のような場所だ。
「村長の息子が行方不明になったらしいから探して欲しいとのことじゃ」
「なんだ、盗賊なのに人助けの依頼なんかうけるのか?
まるで冒険者のような依頼だな」
「いけないか?」
「いけなくはないが、今までの仕事は大体が他国への情報をロマリアへ売るためのことだったからな。
あとは古代遺跡からまだ宝が発掘されていない、いわば宝探しが主だったじゃないか。
なんで親方が人の救出の依頼を受けるのかと思ったのさ」
「一つはノアニールの村長とワシは昔からの知りあいでな。
それとお主の言う通り、今回は古代遺跡の発掘も含まれているからだ」
「ほぉ」
「最近ノアニールの東にエルフの隠里が見つかったとの情報が入った」
「エルフだと!?」
俺は親方の言葉を聞いて驚いた。この世界には人間以外に魔物などもいるがそれ以外に精霊界に属する生きものもいる。エルフやホビットなどがその例でホビットは手先が器用で人間とも有効的な種族であり数は少ないが鍛冶屋などで見かけることがある。
しかしエルフは人間の前に姿を現すことはほとんどない。実在するのは確かだが、俺にとってはどちらかというと伝説的なイメージがある。エルフが住む隠里など普通の人間が探しだせると思っていなかったからだ。
「そうじゃ、エルフじゃ。
そのエルフの隠里に住む娘とノアニールの村長の息子がかけ落ちしたそうでな」
「かけ落ち!?」
俺はさらに驚いた。エルフとは高貴な生きものだ。それが人間とかけ落ちするとは思えなかったからだ。しかし俺は思いだしていた。ノアニールの村長も村長の息子も実は面識がある。村長は凡人だったが、息子の方は皆から好かれていた性格だった。
「どうやら、二人はノアニールの西にある洞窟に足を踏みいれたらしい。
まだあの辺りは未開拓な場所でな。ワシらも行った事がない。
洞窟があったことさえ、最近わかったくらいじゃからな。
しかしその洞窟の近くにエルフの隠里があるくらいじゃからな。
もしかしたら妖精のお宝が眠っているかもしれん。
お主の仕事はその男を連れ戻すこと、それとその洞窟の調査じゃ」
第53話 大剣使いゼネテス
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