【第53話】
大剣使いゼネテス
親方から仕事の依頼が来た。
ノアニールの村長の息子を連れ戻すこと、それとその男とエルフがかけ落ちしたらしい洞窟を探索することだ。
「その洞窟で宝は見つかったら、持って帰ってくるのか?」
「いや、今回はあくまで調査じゃ。
いくら未探索の遺跡とはいえ、宝をとりにいきもし、罠が発動し
死なれては困る。あくまで今回は洞窟のほうは調査のみじゃ」
「わかった。マッピングしてくればいいんだな。
俺一人でいくのか?」
「いや、ゼネテスに同行してもらう」
俺はその言葉を聞いてしかめっ面をした。
「何だ、嫌なのか?」
「気乗りはしない。だが命令なら従う」
ゼネテスとはこのシャンパーニの塔で親方の次に腕が立つ男だ。年は30代前半くらいだろうか。
盗賊は一般的にはショートソードやナイフなど隠し武器を得意とする人間が多いがこのゼネテスという男は自分の身長並にある大剣を背負っている。体が俺と同じくらい大きく引き締まった肉体をしており戦士系の体格だ。
普段はおちゃらけて明るい男だが、その目には隙がなく何を考えているかがわからない。剣術だけでなく、格闘術にもたけており俺は親方から盗賊術を教わったが、ゼネテスからは格闘術を教わった。
ゼネテスが行くということは、俺の連れがゼネテスではなくゼネテスの連れが俺ということになるだろう。
親方以外の人間に従うのはイヤだが、ロマリア城でも、このシャンパーニの塔にも規律がある。親方はそれを覚えさせるために俺に三年間ロマリアにいさせたのだろうから我慢するということは俺も覚えている。
俺は肯き、旅支度をするため親方の部屋を出た。
俺は親方からもらいうけた麻痺性を持つ毒牙のナイフと昔から使っている茨の鞭を腰にさげ鎖帷子、鱗の盾を身に付ける。
一方、ゼネテスは愛用の大剣と必要最低限の荷物を持って俺の前を歩いている。鎧は身に付けておらず、厚手の旅人の服を来ているのみだ。ノアニール周辺は昼間はそれほど強力な魔物はいないが、洞窟にはどのような魔物がいるかわからない。それなのにこれほどの軽装で防具を身に付けないということはよほど戦いに自信があるのだろう。
事実、格闘術に長けているわけで剣を持っていなくても相当奴は強い。だが剣術はヤツの我流であり、俺がロマリアでの兵士(見習い)経験で正式な剣術を学んでこともあるため、ほぼ互角だ。
戦いの腕はたつ。だが性格が少々問題ありでな…
第54話 喧嘩の師匠
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