【第55話】
久々のノアニール
ゼネテスの愚痴を聞きながら歩いていると
ノアニールの村が見えてきた。とりあえず依頼主であるノアニールの村長に話を聞くため村に立ち寄ることにした。
「久しぶりじゃのぉ、まさかオマエさんが来るとは思わなかったわい」
「あぁ、久しぶりだな」
ノアニールには子供の頃から住んで商売をしていたため村長にも顔を覚えられていた。
「なんだ、おまえ、村長と知りあいだったのか?」
「あぁ、ノアニールで十年くらい住んでいたからな」
「なんだよ、だったら教えてくれればよかったじゃないか」
「特に言うこともないと思ったからな」
「情報共有は俺達の基本だ。次からは必ず言うようにしてくれ」
ゼネテスは厳しい口調で俺にそう言った。そんな些細なこと言う必要ないだろ、そう思ってゼネテスを睨むがゼネテスも俺のことを睨み返した。
「…」
こいつのことは好きではないが一応こいつがリーダーでありヤツの言うことは一理ある。だから俺は仕方なく肯いた。それを見て満足そうにするゼネテス。
「で…依頼は親方から聞いたぜ」
俺はゼネテスから視線をそらし、気を取りなおして再度村長に話した。
「うむ…であればわかっていると思うが。
息子を探してもらいたい」
「一応、俺達の情報網でだいたいの居場所はつかんでいる。
しかしあの男がかけ落ちとはな…」
村長の息子のことをおぼろげながら覚えている。俺とそんなに年は変わらなかったはずだ。俺の記憶にあるのは少年の時のイメージで比較的引っ込み思案な感じがあった。だから駆け落ちという大それたことをするようには見えなかった。
「ワシが許さなかったからじゃ。
しかしエルフの娘と結婚するなぞ言いおって」
村長はそう言うと顔をしかめた。どうやら、村長はエルフとの仲を見とめる気はないようだ。まぁ、普通に考えればそうだろう。人間にとって、エルフとは得体の知れない生きものだ。
一応、人間とエルフの間には子供も生まれる。その子供はハーフエルフと言われ、両方の種族から忌み嫌われる。人間は人間同士、エルフはエルフ同士で結婚をするというのが親の当然の心理なのだろう。人間とエルフの間にほとんど交流がないから異種族の結婚を認めたがらないのも理解はできる。
まぁ、俺達の仕事は村長の息子を連れかえることだから二人の恋路がどうなっても金さえ入れば気にすることはないのだが。しかしかけ落ちするほど二人の愛は深いのかそれとも周りが見えてないのかわからないが二人をを見つけたとしても、説得して簡単に帰ってくるとは思えない。
俺はゼネテスの顔を見たが、こいつは無表情だ。しかし喧嘩早いこいつのことだから力ずくで連れ戻すことしか考えていないのではという気がする。
「ふぅ…」
あてにはならなそうだ。さて、どうするかな。
第56話 意外な一面
前ページ:第54話 「喧嘩の師匠」に戻ります
目次に戻ります
ドラゴンクエスト 小説 パステル・ミディリンのTopに戻ります