【第56話】
意外な一面
ノアニールの村長に依頼の確認を聞く。
親方から聞いたこととほぼ同様のことだったが、村長はまだ息子とエルフの仲を認めた様子ではなかった。俺達は話しがすんだ後、村長の家から出た。
「まずは二人がかけ落ちした洞窟に行ってみるか」
俺はゼネテスに声をかける。俺達の目的は二人を連れ戻すことと、その未探索の洞窟を調べることだ。
「親方がいっていた、エルフの隠里についてはどうするつもりだ?」
ゼネテスは俺に尋ねてきた。
「行く必要はないと思っている。一般のエルフは俺達を忌み嫌っていると言う。
隠里にいったからといって何かできることはないだろ。
エルフ族は洞窟のことは知っているかもしれない。
情報集めくらいはできるかもしれないが、嫌っている人間に情報をくれるとは思えない。
もしかしてエルフの宝が隠されているかもしれないところを
わざわざ案内してくれるとも思えないしな」
俺は洞窟に行くことを再優先とすべきたとゼネテスに主張した。
「しかしエルフも一緒にかけ落ちしたのだろう?
だったらエルフ族だって心配しているんじゃねぇのかな」
「まぁ、心配しているかもしれないな。
人間と価値観が違うかもしれないからわからないが」
「だったら、やっぱり親を探して事情を聞いたあと、
二人の仲を両親に説得したほうがいいんじゃねぇのかな」
「…最もな意見だが…
あんたは、息子とエルフを力ずくで連れて返ることしか考えてなかったんじゃねぇのか?」
俺はゼネテスからそんな言葉が返ってくるとは思わなかったので本音を言った。
「バカ言うな」
ゼネテスが憮然とした表情をした。
「だって、この依頼を受けるのも面倒くさいようなことを言って
不満たれていたじゃねぇか」
「そりゃ、面倒くさい依頼だとは今でも思ってるぜ。
だが引き受けたからには依頼は確実に実行させるのが俺のモットーだ。
それに好きあっている二人を無理やり引き剥がすのもかわいそうだしな」
「あんた…昔、女関係でなんかあったのか?」
俺はそう言って、小指を立てた。
「あぁ?
まぁ、古い話だ。
俺みたいな年食ってくるといろいろなことを経験するのよ」
その後は話そうとしない。こいつの昔話に興味は特にないから、聞くようなこともしないがとりあえず、引き剥がすのはかわいそうだという真っ当な考えをもっていることは意外だった。
俺達はノアニールの村を出て、二人がかけ落ちしたと思われる洞窟の近くにあるエルフの隠里に足を運んだ。
第57話 夜のエルフの隠里
前ページ:第55話 「久々のノアニール」に戻ります
目次に戻ります
ドラゴンクエスト 小説 パステル・ミディリンのTopに戻ります