【第58話】
信用
エルフの隠里についたときは既に夜だった。
ゼネテスがちょっとした雑学を俺に披露する。そして俺達は朝が来るまで、眠ることにした。
しかし俺達の目覚めはよくなかった。目をさめていたら、武器を持ったエルフに囲まれていたからだ。
「おいおい、物騒だな」
ゼネテスはその様子を見てびびった様子もなくエルフ達を見渡す。
「おまえ達…何者だ…」
エルフの一人の青年が警戒した声で俺達に話しかけた。
どうやら人間とエルフは共通の言葉らしい。それともエルフが俺達にわかるよう人間の言葉を話しているのかもしれないが話ができることに俺は安堵した。まったく言葉が違い、話が通じない可能性があると警戒していたからだ。
「名乗るほどのものではないが、事情があってこの村に来た。
ノアニールという人間の村がここから東にいったところにある。
そこの村長の息子とここに住むエルフの娘が駆け落ちしたという話を聞いてな。
俺達は村長の息子を村に連れ戻してほしいと村長に依頼された冒険者だ」
俺はそう説明した。本職は盗賊であるが、冒険者というふうにそこは伏せておいた。
「まずはそのエルフの娘の親に会って、考えを聞いてから
二人を連れ戻したほうがよいと判断してこのエルフの隠里に来た」
俺は本当のことを言い、エルフ達の反応を待った。その言葉を聞いて、エルフ達は困ったように互いの顔を見渡している。
しばらくエルフ達は俺達にはわからないエルフ語らしき言葉で言葉を交わしていた。なにやら険悪なムードである。いきなり殺されることはないだろうが、拘束されることくらいはされるかもしれない。少々の覚悟をしながら、俺はその様子を見守った。しばらく押し問答が続いたがそのうち話がついたのか一番最初に声をかけてきたエルフがこっちを向く。
「女王様のところに着いてきて欲しい」
「わかった」
ゼネテスは迷うことなく、エルフの言葉に従った。
女王のところに連れて行かれる間、俺達は槍を持つエルフに囲まれたままだった。まだ警戒は解いてないようである。
そうだろう。俺達の言っていることが嘘であるという疑いもあるだろうしエルフの宝を狙ってきた冒険者だと思われているかもしれない。人間だって突然城に他国の人間が入れば侵略の恐れや情報の漏れの心配から警戒をするだろう。
事実、俺達はエルフから情報を引き出そうとこの隠里に侵入した。そのため信用を得るために、しばらくは素直に従うことにした。
第59話 エルフの女王
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