【第57話】
夜のエルフの隠里
ゼネテスとの相談の結果、俺達はエルフの隠里に行って
駆け落ちしたエルフ娘の親に会うことにした。二人の仲を認めさせて、ノアニールなり、エルフの隠里なり住めば一応依頼も済ませたことになるだろうし、二人にとっても良い結果になるだろう。
ノアニールを出発して西に向かい、盗賊仲間が仕入れた情報からエルフの隠里に向かう。
森があり、その中のかなりわかりにくいところで人間が普通では入り込まないようなところに隠里があるらしい。
森に夜入るのは危険なため、森の外で一泊したところ魔物たちが襲ってきた。アニマルゾンビやデスフラッターなど 5匹近くの魔物が現れたが俺が戦闘をする前にゼネテスが一人魔物の中に飛び込み背負っている大剣を振り回し、たちまち全滅させた。
その戦い振りは自分から望んでいたかのようで嬉々とした様子で大剣を振るっていた。
命を奪うためらいもせず、戦いに身を置くことが好きな戦士の戦い振りだった。見る人が見れば残虐な行為だとも思うだろうが、やらなきゃこっちがやられるし、俺も似たような性格なので襲ってきたほうが悪いと思うことにしている。
森の中でも何度か魔物が襲ってきたが、ほとんどゼネテスが一人で片付けてしまった。魔物のほうは問題がなかったが、エルフの隠里を探すのに苦労をした。
何しろどこも似たような景色であり、普通の人が見たらまず迷うだろう。俺やゼネテスは盗賊術を学んであるので、他の人が見分けられないような印を見分けることができる。それでもエルフの隠里を発見するのに丸半日を費やした程だ。
隠里についたのは夜である。人の暮らしの後が見られて、木の自然のくぼみに作られた家や湧き水を利用した水のみ場などが作られていてここが隠里には違いがなかった。
夜目はある方だが、夜なのでほとんど見渡すことができない。
「真っ暗だな…」
「エルフは森や木を大事にする種族だ。そのため火を嫌うらしい。
必要に応じて、魔法による光で明かりをともすこともあるだろうが
普段は自然のまま、太陽が沈んだら眠る生活をするんだな」
ゼネテスは辺りの様子をみてそんなことを言った。
「魔法で明かりを灯すことなんてできるのか?」
「俺も魔術に詳しいわけではないから、よく知らないが
エルフには人間とは違う独自の魔法文明があると何かの文献で読んだことがある」
「ほぉ…」
俺も魔法についてはまったくわからないがリュックが魔法を使えることから、魔法を常に目にしてきたのでそれなりに魔法については知っているつもりだった。
しかしリュックからそんな話を聞いたことがなかったので感心したのと同時にゼネテスがそんな文献を読むような人間に見えなかったので少し驚いた。
「さて、これからどうする?」
「一夜明けてから、朝探索してみるかな」
「了解」
そうであれば、俺達がすることは眠ることしかない。俺達は適当な木に身を預け、眠って朝が来るのを待った。
第58話 信用
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