【第61話】

夢見るルビーの秘密


女王の間を出てきて隠里を出ようとした俺達に

一人のエルフが声をかけてきた。

そのエルフが女王が何故すぐに出て行けと命じたのか

また駆け落ち娘が女王の娘ということを教えてくれた。

そしてアンという娘はエルフの宝夢見るルビーを持ち出したという。




「夢見るルビー?」


エルフの宝ということはさぞ価値があるに違いない。

俺はエルフに先を促すよう問いかけた。

必要な情報を得るための話術の1つだ。


「あぁ、夢見るルビーがあるからこそ、この隠里は今まで誰にも見つからなかったのだ。

 その魔力によりここには霧がかかっていたからな。


 その夢見るルビーをアンが持ち出したから、おまえ達人間もここに来ることができたわけだ」



「何故、アンはエルフの宝を持ち出したんだ?」


ゼネデスが問う。


「女王様を困らせようとしたのだろう。


 アンは好奇心旺盛の娘だった。

 いつも外の世界にあこがれていたが、女王様はそれを許さなかった。


 しかしアンは女王の反対を押し切って一人で外に出てしまった。

 その時に魔物に襲われ怪我をしたのだが、それを手助け、手当をしたのが人間だった」


「それがノアニールの村の村長の息子だったというわけだな」


俺の話にエルフの青年は頷く。


「アンにとって、人間界の男は魅力的だったのだろう。

 いつしか二人は恋に落ちた。

 しかし当然の事ながら、女王様はアンとその青年の中を認めなかった」


「なるほど…それで困らせようとして宝を持ち出したわけだ…」


「子供だな」


俺とゼネテスは顔を見合わせた。


エルフの娘にとっては母親を困らせようとしただけなのかもしれない。

しかし夢見るルビーがあったからこそ、隠里は完全な世界を保っていたわけであり

それを持ち出すということは女王だけでなく、部族全員を危険にさらす可能性もあるわけだ。


そういう危険性を考えないで、感情だけで行動をしてしまうことに

アンという娘の子供的な考えを感じだ。


それにしても、夢見るルビーについては魅力を感じた。

それだけの魔力を持っているので有ればさぞ高価な品だろう。

値段がつけられないかもしれない。

しかしエルフの宝を手に入れてもそれを持ち帰るのはさすがに俺も気が引ける。

変わりの宝を交渉するという手もあるが

まぁ、まだお目にかかってもない宝のことだ。

それが手に入ったときにでも考えればよい。


「であれば、女王は夢見るルビーとアンを連れ戻したがっているわけだな」


「そういうわけだ。だがどこにいったのかがわからん…」


「一応、二人が駆け落ちしたところの目星はついている」


「本当か!?」


第62話 勝者と敗者

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