【第63話】

エルフの同行


エルフの青年はアンに好意を寄せている。

しかし本人にその好意を伝えたことがない青年に

ゼネテスから手厳しい言葉が飛んだ。




「あなたの言うことはその通りかもしれない。

 エルフは閉鎖的な社会を営んでいる。

 だからいつまでもアンはエルフの森にいてくれると勝手に思っていた。

 だがアンは変化のある生活を望んでいた。

 

 アンの居場所を教えて欲しい。

 私はアンを連れ戻しに行く」

 

俺はゼネテスと顔を見合わせた。


「どうする?」


ゼネテスに指示を仰ぐ。


「一つ聞きたい。あんたは戦うことはできるか?」


「…戦い?」


「あぁ、もしかしてこれから行くところは危険があるかもしれねぇ。

 俺達もこれからその場にいくつもりだ。

 あんたが戦えるのなら一緒に連れてやってもいい。

 だが自分の身は自分で守れるくらいに戦えないのであれば足手まといだ」

 

青年はその言葉を聞いて驚いているようだ。

エルフの隠里という閉鎖社会にいたのだから、

戦いなど無縁であったのかもしれない。


「魔物と戦ったことは…ない。

 でも弓矢は使える。

 普段我々は狩りをしないがエルフ族のものは自衛の為に弓矢を覚える。

 それと癒しの魔法も心得がある。

 あなた方の足手まといにはならないはずだ」

 

「ふむ…」


ゼネテスは少し考え込んでいる。


「連れてやってもいい」


そう言うとかすかに青年の顔が笑顔になった。

しかしそれもつかの間、思い詰めた顔をする。

アンの身を案じているのだろう。


ゼネテスが連れていくと判断したのは

足手まといにはならないということだけではないようだ。

魔法使いが一人いれば、戦士は何倍もの力を発揮する、

それに特にこの辺の地形は俺達よりはエルフの方が詳しいかもしれない。

またエルフの青年がいた方が、同族のアンを交渉しやすいという考えもあるのだろう。


「場所はこの隠里から西にいくと洞窟がある。

 そこに二人がいるはずだ」

 

「あの洞窟に!?」


「洞窟のことを知っているのか」


俺は青年に尋ねた。


「い、いや、行ったことはない。

 だが存在だけは知っている。

 あそこには魔物もいると聞いたことがある。誰も近づかない、

 そんなところにアンは行ったのか…」

 

「あえて誰も追って来れないところを選んだのかもしれないな。

 この周辺で身を隠すとなると、ノアニールの方を出た身として村には行けないだろうし

 といって隠れ里にいるわけにもいかない」

 

「わかった。ぜひあなた達に同行させてほしい」


「いいぜ、あんたの名前は?」


「私の名前はレルラだ」


第64話 食文化の違い

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