【第70話】
人脈
アンは魔法の力なのか俺達の前から姿を消した。
ゼネテスの提案により俺達は洞窟から退却することになった。
洞窟を出るまで、レルラは一言も口を聞かなかった。よほどアンのことがショックだったのだろう。
「レルラをここで放りだすと、ここでのたれ死にそうだからな。
とりあえず隠れ里まで戻るぞ」
「あぁ」
特に異論はない。
俺達が歩くとレルラは黙って着いてきた。
少し気まずい沈黙が続く。
ゼネテスが沈黙に耐えられなかったのか、口を開いた。
「しかし、あれだな。
おまえがシャンパーニに来て、もう四年にもなるか」
「あぁ、そうだな、毎日退屈しないから早く感じたぜ」
ゼネテスの気持ちもわかったので俺は話をあわせることにした。
「どうだ、シャンパーニは?」
「悪くはない。ロマリアも良い雰囲気だったが、俺はこっちの方がいいかな。
最低限の掟はあるが、わりと自由だしな」
「おまえがここに最初に来たときはびっくりしたな。
親方にいきなり勝負をするなんてな」
「俺は親方を越えたくて、ここにいるからな」
「無理無理、親方を越えるなんて一生無理だぜ」
ゼネテスにそう言われて、俺は少し憮然とした表情になる。
「そんなの、わからねぇじゃねぇか」
「そうやってすぐ怒るのが子供なんだよ。
親方に教わっただろ。盗賊で必要なのはなんだ」
「…技術と人脈と…常に冷静でいること」
「おまえは体が大きいし力があるのは認める。
その割に手先も器用で盗賊向きだというのも認める。
だがな、自分の感情を制御できないと、いつか命を落とす羽目になるぞ」
ゼネテスは俺に諭すように言った。先輩づらして物事を言うのが気に入らない。
俺は話をそらすように別の話題にする。
「しかし、ここに来て驚いたのが
この盗賊団ができてそんなにたっていないことだな。
親方が数十年も盗賊団をやっていると思ったのに
俺が入ったときにまだできて五年ということだろ」
ロマリアの王と人脈があるということから相当歴史のある盗賊団だと思っていたのだが俺が入ったときでこの盗賊団ができてから五年程度であるということだった。ロマリアでの暮らしが三年間あったから、盗賊団ができて二年目のときに俺は金の冠事件で捕まったわけだがその時に既に親方はロマリアの王家と人脈ができていたということなのだ。
「どうやって親方はロマリア王との接触をしたんだろうな」
俺は疑問を口にした。
「俺も詳しいことは知らないが
親方は元々王族と関係があったらしいぜ」
第71話 名前の価値
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