【第71話】
名前の価値
洞窟を出たあと、無言のレルラを連れて
俺達はエルフの隠れ里までレルラを送っていくことにした。その間、ゼネテスと俺達が働いている組織と親方の話をする。
ロマリア王と親方は接触をいつから持っていたのか疑問に思ったが元々王族と関係があるらしいとゼネテスは口にした。
「ほぉ…それは初耳だな」
「親方はもともとサマンオサの出身らしい。
まぁ、俺もそれ以上のことは知らないがな。
親方自身も身の上話はしないし、
最初から盗賊団に入っている奴しか知らないことさ」
「そういえば、カン…親方の名前を人の前で言うのは
禁止されているしな」
カンダタと言おうとしたが、組織に関係あるもの以外の人間がいる場合カンダタという名前を言うのは禁止されている。俺はレルラがいるのを思いだした。
ロマリアを出るときに、王から口外するなと言われたことだ。これはまだ俺がロマリアにいたときに、ロマリアと盗賊団の関係を国民には知られるのはマズイということだった。
だが、それ以外にも「カンダタ」という名前を人前で出してはいけない理由があるようだ。この組織に入ってから知ったことだが「カンダタ」とは、親方の名前ではなく、組織名として名づけられたようだ。
これは俺の勝手な推測だが、仕事で成功をおさめることで組織の信用力がつく。信用力がつけば、当然次の仕事がとりやすくなる。さらにその仕事をかたづければ
、信用が高まる。
仕事をしつづける信用価値を高める「組織名」として親方は「カンダタ」と命名したのではないかと思う。
事実、今まで他の盗賊組織に仕事をもちかけたときに「カンダタ」という組織名をだしただけで、信用されることがあった。
盗賊団同士の中では「カンダタの者」と言われればそれだけの価値があるのだ。
一方、御密に仕事をする組織のため一般国民に名前が知られるのはマズイ。そのために盗賊団以外の人間には「カンダタ」という名前はまったく知られていない。
だが、国家規模の情報網なら他の国でも「カンダタ」の名前くらいは知るものがいるかもしれないが。
カンダタとは、シャンパーニの塔を拠点とする組織名であり親方の呼び名でもある。
親方はわずかな期間でカンダタという巨大な組織を作り上げた。過去にいろいろな人脈があったからこそ、今の組織を作れたのだろう。
しかし、親方の本当の名前は誰も知らない。親方が過去にどのようなことをしているのかも盗賊団に最初からいるゼネテスでさえ、元々王族と関係があったことしか知らないのだ。
親方に以前尋ねたことがあったが、ワシの名はカンダタじゃ、の一点張り。
それに最近親方は別の大きな仕事を追っているらしくシャンパーニにいることも少ない。
そんな話をしていたら、エルフの隠れ里が見えてきた。
第72話 夜明けのノアニール
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