【第76話】 雲隠れ
魔王バラモスという者が、全世界に戦線布告をした。
また以前、俺を雇っていた組織がテドンで不穏な動きをしているらしい。俺は六人の仲間達と共にテドンに向かうことになった。親方から毒を仕込んだ暗殺用のナイフを手渡される。
テドン行きへの船を見つけるのは困難を極めた。海の魔物も凶暴化したため、船の数が激減したのだ。俺達は何本もの船を乗り継ぎ、テドンを目指した。
そして船の中で考え事をする。
もし魔王復活と、人体実験をする組織が関係しているとすれば欲深い人間が魔物と契約をしたのか組織が魔物にのっとられたのか元々魔物が人間に入れ替わっていたのか、いろいろ考えられる。
ただ組織と魔王が関係するのであればこのような人体実験をした組織の目的は明白だ。「世界を制圧」することであるだろう。
もしそうであれば、俺が金の冠を盗みに依頼されたのは、組織が資金面を手軽に調達するためにしたのであろうと親方が話していた。
ロマリアの金の冠は純金でできているため闇で売れば、それこそ一財産作れるくらいの価値がありその資金を手に入れ、さらに人を集めたかったのだろう。
ただ魔物や魔王がからんでいるのであれば、金の冠を依頼してとらえた首領というのは組織で末端の末端でもあり、以前親方が言っていた。
その上の黒幕も所詮は組織の中での一部に過ぎないのだろう。また人集めの組織事態も、組織では一部に過ぎないのでは。
それだけ相手は巨大だということだ。
人間を殺して、ゾンビとして蘇らせるということ事態普通の人間であれば考えられないことだが相手が人間でなけれな…
くそ…いったいこの世の中はどうなるんだ。
何本もの船を乗り継ぎ、ようやく俺達はテドン近くの港についた。港は人がおらず、閑散としていた。
「どういうことだ?」
仲間の一人がつぶやく。二年ほど前に俺達の組織に加わったラゴスという男だ。
確かにラゴスが言うようにおかしい。雲隠れしたのではないかというほど人がいないのだ。
「とりあえず情報集めだ。 港にいる人間を探し、事情を探るんだ」
俺が提案すると、皆うなずく。今回親方からは俺がリーダーを任されている。そのため現地での具体的な指示は俺が出すことになっている。
「日没にここに集合だ。いいな」
そう言うと皆が各々に散った。
第77話 尊敬
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