【第80話】 緑の液体
意識を取り戻したところはどうやら牢屋のようだ。
俺は人体実験をする組織に囚われたらしい。手足は縄で縛られ、身動きができない。俺は縄抜けをするため右肩の関節をはずそうと石床に肩をたたきつけた。
俺の苦痛の声にラゴスも目を覚ました。
「ここは…ウッ…体中が痛い…」
「おい、ラゴス、目を覚ましたのならルーニを止めてくれ!」
しばらくして事情を把握したラゴスは俺も止めに入った。
「やめてくだせぇ!!ルーニの旦那!!!」
しかし縛られている身なので、止めにはいると言っても声をかけることくらいしかできない。
そんな騒ぎを聞きつけたのか、先ほどの魔女がまた戻ってきた。同時に俺の肩は今までにないような激痛が起きた。
脱臼したのか、肩の骨が粉砕されたのかわからなかった。
「ガアァァ!!! クッ…縄抜けどころじゃねぇな…」
骨折した人間にしか骨を折る痛みというのはわからないが泣き叫びたい、逃れたいそんな感覚だ。
”なんだい、もうみんな起きているじゃないか”
魔女は俺達を見て、あきれたような顔をした。そしてまた姿を消し、今度は仲間の魔女を引き連れて戻ってきた。
引き連れてきた魔女は、何か壺みたいのを持っている。その壺は怪しげな湯気を放っていた。
”起きたんなら、これを飲むんだよ。 そうしたら、痛みが楽になるからね”
魔女は一番痛がっている俺に壺の液体を飲ませようとした。
「だ、誰が飲むか!」
俺は頭突きを魔女にくわらせた。
”ギャアアァ!!!!”
魔女が持っていた壺が割れ、辺りに液体が飛び散る。暗闇で色はわからないが、蛍光色を放つ緑色の液体だった。
”このバカ!!!”
もう一人の魔女が俺の頭を思いっきりけっ飛ばす。
「グハッ!!!」
俺の頭は石床に叩き付けられた。
”ったくまた薬を持って来なきゃいけないじゃないか!”
魔女がもう一人の魔女を助け起こしながら、俺に怒鳴る。
”おとなしく待っているんだよ”
魔女はそう言うと、もう一人の魔女に肩を貸しながら液体の入った壺を再度取りに行ったようだ。
魔女の声は俺の頭に入らなかった。右肩は骨折の痛み、顔には蹴られた痛み、全身はベギラマで火傷の痛み、とにかく体中が痛かった。
しかし、本能的にここから逃げなければという思いだけは持っていた。だから俺は徐々にではあるが、激痛に耐えながら後ろ側で縛られている手を上の方にあげていった。
「アッ…クッ…」
脂汗が流れる。しかし骨が折れているため、あり得ない角度で右肩を回し縛られている腕を前に持ってくることができた。
俺はロープを口のところに持っていき、ロープをかじる。口に苦い味が染み渡る。
「ルーニの旦那、がんばってくだせぇ!!!」
第81話 実験材料
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