【第85話】 脱出
俺はラゴスの命を奪って、もやは動く気力もなかった。
盗賊仲間のウッソは瀕死の俺に肩を貸してここから出ようと提案した。
牢屋を出ると、登りの階段があった。ウッソは気をつけながら、一段ずつ俺を登らせていった。
「しかし、このまま丸腰の状態で果たして港までたどり着くのは厳しいな。 もし、さっきのように組織の奴らや、魔物が襲いかかってきたら、 どうしようものない。 何か探さないと」
「…」
「ルーニ、おまえの気持ちはわかる。 だがな、あれは事故だ。どうしようもなかったんだ。おまえのせいじゃない。 それよりもラゴスの分まで生きる、それが俺達にできることなんじゃねぇか?」
「ウッソ…」
ウッソが元気づけようとしているのは、わかる。確かにウッソの言うとおり、ラゴスの分まで生きる、それが生き残った俺達のすることなのかもしれない。でなければ、ラゴスを殺してしまってまで…生き残った自分達は一体なんなのだ。
「…あぁ、そうかもしれないな…」
俺はやっとそれだけのことを言えた。
「とにかく、今はここから脱出することだけを考えよう。 そして親方に報告するんだ」
「あぁ…」
そうだ、今は生き残ることを考えるんだ。
「武装のことだが…俺達から取り上げた引きがこの近くにあるんじゃねぇかな…」 「たぶんな。武器をわざわざ処分などしないだろう。 だが油断は・・・できねぇ」
俺は肩の痛みを我慢しながら話す。
階段を上りきると左右に道がある。
ウッソは注意深く通路に顔を出し、辺りを見る。
「誰もいないな・・・ とりあえず、俺が先を見てくる。 ルーニはここで待ってくれ」
「あぁ」
ウッソは忍び足で右の道に進んでいった。三分程度すると、ウッソは俺達の武器を持って戻ってきた。
「あたりだったぜ。 一室あるだけだったが、中には怪しげな湯気を出している壷と 俺達の武器があった」
たぶんその壷はさっきラゴスが飲まされた薬が入っているのだろう。
「壷は・・・そのままにしておいた」
懸命な判断だ。
人を魔物にする薬など壷ごと、ぶっこわしてやりたかったが薬の危険度がわからない。
壷を倒した瞬間、湯気を吸い込んだだけで魔物になる可能性もあるからだ。
また派手に壷を壊したりしたら、音で誰かが気がつき、増援が来るかもしれない。
今俺達がすることはこの場から脱出してシャンパーニの塔に戻ることだった。
「今度は左の通路を見てくる」
たぶん出口に通ずる道だと思うが見張りの数など知ることができればなんらかの対策をとることができる。
ウッソがまた忍び足で偵察に行っている間、俺は右手でナイフなどの武器を装着した。
左手が使えないため、兵士時代に培った盾をもつ戦いもできないし右手も力が入らない。使いたくはないが親方からもらった致死性の毒を塗ったナイフが役立ちそうだ。
また数分たつとウッソが戻ってきた。
「外に通じていた道はわかった。 だが出口に見張りは二人がいた。 ・・・たぶん魔物化された人間だ」
「そうか・・・」
ためらいはあるが、殺らなければなるまい。
第86話 おとり
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