【第84話】 生き残った二人
魔女の行為と、極限まで追い込まれた俺は
生まれて初めて、”キレタ”。
魔女二人を倒し、魔物化されたラゴスの命も奪ってしまった。
ラゴスの命を奪い、俺の怒りは悲しみにかわった。
「ウゥ…ウゥ…」
止めどもなく涙が出てくる。自分のしたことを猛烈に後悔した。
生まれて初めて人を殺してしまった…しかも仲間であった人間を。昨日まで同じ釜の飯を食っていた男を殺してしまった。
「ウッソ…俺…ラゴスを殺してしまった。 殺してしまったよ…」
「あぁ…」
未だ縄に縛られているウッソも、俺の残虐な行為に何も言えないでいた。
それほど辺りは凄惨な光景だ。
「あぁするしかなかったんだ…あぁするしか…」
俺は子供が言い訳をするように、何度もつぶやいた。
「あぁ…わかってる。 おまえがやらなければ…俺達がやられていた」
「…」
俺はよろめきながら、ウッソのところに行き、動く右手でウッソのロープをほどいた。左手は完全に動かなくなっていた。
「すまねぇ…」
「…」
「ルーニ…歩けるか?」
「…」
「肩をかそう」
全身火傷で、頭から血を流し、左肩を完全に骨折全身には返り血も浴びている俺をいたわってかウッソは俺の右腕を自分の肩に回し、俺を支えた。
俺は緊張の糸がきれて、ウッソによりかかった。立っているのが不思議なくらい、瀕死の状態だった。
「ここは危険だ、早く離れた方がいい。 この調子じゃ、テドンに戻っても危険だな。 こいつらの組織が、もしかしたら総攻撃をかけているかもしれない。 おまえの手当はすぐにできないが、港に戻ってこの大陸から離れた方が良いだろう」
「…」
俺は何も言う気にもならなかった。ただ、人を初めて殺してしまった、その想いが俺を支配した。
第85話 脱出
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